「まるで立民」自民総裁選は政府丸抱え政策ばかり 「民間は疲弊し、国が先頭に立つ」状況なのか

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公立学校の充実や高等教育への支援は、それはそれとして的確なテコ入れは必要だ。しかし、それは経済力に拠らず学力に応じて生徒の選択肢が広がる形での充実や支援が必要なのであって、指導力に欠ける教員を温存したり、定員割れをする学校の延命になるようなことになってはいけない。

教育、保育、医療、介護、福祉といった分野を、十把一絡げに「公的セクター」と呼ぶのは不適切だ。なぜなら、医療機関や介護事業者の多くは民間だし、私立学校や私立保育園も多くあるからである。

そこで働く人たちの多くは、公務員ではない。民間の経営主体の自主性を重んじつつ、より少ない国民負担でよりよい質のサービスが提供されるように政府が制度設計をすることが重要で、政府が頭ごなしに(民間の経営者を差し置いて)これらの分野の従事者の給与引き上げを図るべきではない。

人口減少に逆らう「底上げ」よりもすべきこと

東京一極集中の是正は、人々の居住地選択の自由を故意に歪めてまでして達成すべきものではない。そもそも日本の総人口はしばし減少傾向だから、その人口減少に逆らうほどに地域経済を無理に底上げすることを政府はすべきでない。

むしろ、各地域が民間の経営主体の自主性を重んじつつ身の丈に合った経済規模で持続可能にする方策を、全国一律でない形で実施することが求められる。

今後のあるべきわが国の進路は、「社会主義国化」ではない。多くの国民はそれを理解していると思うが、何かと近年では、民間は疲弊していて政府が丸抱えで関与することを求めているかのような節がある。

今こそ、政府の関与の適切な度合いと、民間活力の活かし方について、熟考すべき時だろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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