9月27日の自民党総裁選挙で選出された新総裁が、岸田文雄首相の後を襲う新首相となる見込みである。
岸田内閣の約3年間では、税制改革の議論が具体的には進まなかった。
2023年6月には、首相の諮問機関である政府税制調査会が「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」と題した中期答申を取りまとめ、岸田首相に手交した。その中で、税制全般を再点検し、経済社会情勢の変化を受けてさまざまな社会的課題に対応できる今後の「あるべき税制」について議論を喚起した。
増税は「超高所得層のみ」だった岸田政権
岸田首相は、自民党総裁に就任する前の総裁選挙に立候補した際、「1億円の壁」(年収1億円を超える高所得層では、所得が高くなるほど税負担率が下がる現象)の是正を訴えていた。
確かに、その是正策として、約30億円以上の高所得者に対して追加的な所得税負担を求める「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化のための措置」を所得税制で新設することとした。
しかし、岸田政権下での税制改正では、むしろ「増税」を避け続けた。
「こども未来戦略」(2023年12月閣議決定)に盛り込まれた施策には、「少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない」と明記したり、2024年6月には所得税・個人住民税の定額減税を実施したりした。
政権が税制について抜本的な議論に踏み込まなければ、増税は避け続けられても、現行税制の歪みは残されたままである。現行税制によって生じる国民生活へのしわ寄せは温存される。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら