高所得者に高い率の所得税を課せば所得格差ができるというのは、幻想に近い。高所得者への課税を5%上げたとしても1000億円単位の税収しか上がらない。高所得の人数が少ないためにこれだけの税収しか上がらず、それでは低所得者への負担軽減はほとんどできない。
他方、消費税は格差是正のためにはパワフルだ。消費税は、高所得者が多く負担する。現役世代だけでなく高齢世代も負担する。例えば、消費税率を3%上げると8兆円近くの税収が入る。これで低所得者にだけ10万円の社会保険料負担軽減なり給付なりを追加で行うことは容易にできる。
もちろん、消費増税に伴う低所得者の負担増は無視できない。しかし、負担増を上回る社会保険料負担軽減なり給付なりが可能である。
消費増税と負担軽減・給付の組み合わせ
現に、低所得者が払う消費税は年に10万円程度である。今から消費税率を3%上げると低所得者の3万円ほど税負担が増えるが、その増収分で10万円の社会保険料負担軽減なり給付なりをすると、実質的には7万円手取りの収入が増えることになる。
所得税で累進課税を強化するよりも、消費税と給付の組み合わせのほうが、所得格差是正にはパワフルなのである。所得格差の是正は、所得税だけで解決できるものではない点に留意が必要だろう。
消費税は国民に不人気な税であるが、政治家は、こうした議論に対して、賛否はともかく、議論を避け続けていては、今の仕組みの矛盾はまったく解消されない。新首相は、税制について思考停止にならず、国民的な議論を積極的に喚起すべきである。
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