東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #岐路に立つ日本の財政

パワフルに「格差是正」するのは所得税か消費税か 岸田首相が避けた「税制論議」新首相はどうする

6分で読める
  • 土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授
2/4 PAGES
3/4 PAGES

さらに、現行の所得税制は所得格差是正効果が弱い。低所得者は所得税をほとんど払わなくてよいが、所得税の負担が軽くなるだけしか恩恵がなく、所得税制を通じて手取り所得が増えるわけではないので、所得税で所得格差をならせてもわずかでしかない。

むしろ、低所得者にとって負担が重いのは、所得税よりも社会保険料である。医療や年金といった社会保障の恩恵を受けたければ、所得が少なくてもそれなりに多い社会保険料を払わなければならない。これが、所得格差の原因となっている。

低所得者の社会保険料の負担を軽減するには、皆で払った税金を使って低所得者向けにもっと給付を出すことを考えなければならない。

「高所得者に増税して格差是正」という幻想

これまで、消費税率を10%に引き上げる際の増収分で、低所得者の社会保険料負担の軽減策を講じてきた。しかし、それでもなお低所得者の社会保険料負担は多い。いわゆる「年収の壁」の問題も、ここに起因している。

低所得者の社会保険料負担の軽減策や「年収の壁」の解消策を本格的に考えるならば、税制を使うしかない。低所得者の社会保険料負担も「年収の壁」も社会保険料の問題である。だからといって、社会保険料の問題を社会保険料収入で解決するのは筋違いである。

なぜなら、社会保険料は、病気になるリスクや要介護になるリスクなど保険事故に対応して払うことが基本だからであり、低所得者の負担軽減のために追加して社会保険料で負担を求める筋合いのものではない。

やはり、税収を活用した問題解決を図らなければ、抜本的に解決しない。消費税率を10%に上げた後の歴代政権は、増税の議論を避け続けているため、こうした抜本的な所得格差是正ができずにいる。

次ページが続きます

4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象