都市の生活の良い部分と、田園地帯での良い部分を併せ持つ「庭園都市」。ル・コルビュジエが設計したインドのチャンディガールという都市もまさに緑豊かな美しい「庭園都市」だ。しかし、この都市の「喘息・アレルギークリニック」で喘息と呼吸器アレルギー患者を数十年にわたり診療してきたミーヌ・シン医師の元には、アレルギー患者が殺到しているという。
一体、この「美しい街」で何が起こっているのか。元ジャーナリストで医療人類学者のテリーサ・マクフェイル氏が5年もの調査を経て上梓した『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』から、チャンディガールという都市の住民が抱える苦難について、一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
ル・コルビュジエが設計した「理想郷的な都市」
私がシンに、彼女の地域で何がアレルギーの増加を促進していると思うかと尋ねると、地域環境とインドの生活様式、それぞれの変化による二重の問題を指摘した。全くもって、その事情はありとあらゆる場所で変わらない。違うのは細部だけだ。
さらに南の、デリーやムンバイやチェンナイでは、どこもかしこもコンクリートで固められて混み合っており、汚染が更に多く、タバコの煙への曝露もより早くから始まるのだと、シンは説明する。
チャンディガールにも大気汚染はあるが、植物も多い─―それゆえ、飛散する花粉の量も多い。その理由の1つは、この都市がどのように設計されたかにあるという。
「この都市はゼロから作られたものです」とシンは説明する。
「インド独立後に建設された都市で、設計したのはル・コルビュジエです。ですから、たくさん木を植えたのですね」。
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