そうなるのは真菌が過剰増殖してしまうせいだ。シンは増加した工事、不適切な農業慣習、そして徐々に変動する気候を、チャンディガール内外でのカビ胞子増加の背景として指摘する。
真菌は比較的湿った、暖かい環境下で繁殖する。そして、チャンディガール市内で新たに行われている多くの工事の現場が、かつて農地だった、地下水位の高い場所にある。
「こうして作られる比較的新しい家々は皆、湿気の問題を抱えています」とシンは言う。チャンディガールのあるインド北部では、心配すべきチリダニはあまり多くない──彼女の患者たちにとってはありがたいことだ。
だが、もっと温暖なインド南部では、患者たちが真菌、そして増加したチリダニの両方にさらされているのだという─―喘息とABPAを招く破滅的な組み合わせだ。そして不運なことに、ABPAには良い治療法がない。
美しい街の見えざる敵「微粒子、花粉、カビの胞子」
気候変動、そして、それによって世界各地で生み出されているより湿潤温暖な天候により、真菌への感作は大きな問題となりつつある。特に南アジア諸国ではそうだ。
こうした気温の急変動は、植物と真菌が繁殖する時期と様式に変化を与えうるものであり、実際に与えている──それが、世界中で増加する呼吸器アレルギーと喘息の患者に大混乱をもたらしている。
そして、シンは将来より良く、より効果的で、より安価な治療法がもたらされるかもしれないという希望を持ってはいるものの、私たちが今まさに歩んでいる道については何の幻想も抱いていない。
彼女の街は美しいかもしれないが、微粒子、花粉、そして増加しつつある真菌の胞子が充満してもいる。その空気の質は、目下のパンデミックにもかかわらず、これからの10年間で改善しそうにはない。彼女は自身のクリニックがこれから持ちこたえられることを願うばかりだ。
(翻訳:坪子理美)
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