実は、以前の未来工業は、午前8時始業で午後5時終業。繁忙期には残業もある、ごく普通の会社だった。「残業禁止になる前は、定時に帰るという発想もなかった」という社員もいたほどだ。
「楽園企業」が生まれた3つの理由
それが今では、残業禁止だけでなく、残った仕事の持ち帰りも禁止。同社が、「楽園企業」に生まれ変わったのには3つの理由がある。
「17時に仕事が終わっても、近所のスーパーの閉店時間に間に合いません」
本社が大垣市内から移転すると、同市内に住む多くの社員は、20分以上早く自宅を出なければならなくなった。退社時間も遅くなり、女性社員からは「スーパーの閉店時間に間に合わない」と不満が寄せられた。
「そしたら始業時間を30分遅らせて、終業時間も15分早めよう」
創業者である山田昭男氏の決断で、「毎朝8時半始業、夕方16時45分終業」の7時間15分の勤務体制が生まれた。
「残業手当は、もったいないから払いたくない」
生前の山田氏は、実に率直にそう話していた。残業手当は、基本給の25%もの割増しになるためだ。
だが、生前の山田氏は本音とも冗談ともつかぬ発言で、相手を煙に巻くのが上手な創業者だった。2番目までの発言も額面どおりには受け取れない。長年取材してきた身からすると、むしろ次の3番目が最大の理由だった気がする。
「ウチの社員たちには、ほかの会社みたいに、一度きりの人生を仕事だけで棒に振るような人には、なってほしくなかったんや」
山田氏は、そうも話していたからだ。しかし、それはただの美談ではない。前回の記事で書いたように、それが「社員を喜ばせて、やる気を引き出す」ことになり、ひいては「会社も儲かるはずだ」と、あの山田氏なら考えていたはずだ。
ここまで読んできて、「でも、どうやって残業しなくて仕事が終わるの?」と疑問に思った人もいるかもしれない。
そこで、未来工業式「さっさと帰る秘訣」を最後に紹介したい。
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