錯覚から探る「見る」ことの危うさ《第3回》--不可能ではない「不可能立体」


 第一に、作れそうにないと感じるにもかかわらず、立体感を持ってしまう。これは、これらの絵が部分ごとには正しい立体の絵になっているためであろう。これらの絵を見た人がだまされるもう1つの側面は、実際には立体として作れるのに、そのような立体を思い浮かべることができないという点である。
 
 これはなぜであろうか。私が現在持っている回答は次のとおりである。

これらの絵は、3方向の線のみを使って描かれているという特徴を持つ。たとえば、図1の絵は、図7に示すa、b、cの3方向の線しか使われていない。3方向の線だけを使って描かれた絵を見たとき、人は、面と面が直角に接続されて立体ができていると思い込みやすいようなのである。
 
 そのため、図1、図2、図3などを見た人は、直角だけでできた立体の中でこれらの絵を投影像に持つ立体を無意識のうちに探す。それが見つからないから、立体として作れそうにないと感じるのであろう。



図7.「無限階段」に使われている3つの線の方向


 直角という解釈を優先する脳の働きは、生活経験を積み重ねるほど強くなるように思われる。実際、小学校へ入る前の年齢の子どもには、これらのだまし絵や立体は別に不思議なものではないらしい。見せても「どこが変なの?」と言われてしまう。
 
 小さい子どもはピカソのような絵を抵抗なく描くことができる。これは、形に関して大人の常識などに染まっておらず、どんな形でも柔軟に受け入れることができるためであろう。その柔軟さは、だまし絵にだまされない柔軟性でもある。

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