岩手発・ヘラルボニー「福祉×アート」その先へ ネクタイは3万円台 商品の魅力で選ばれる強み
たとえば、ネクタイは1本3万5200円と決して安くない。この価格設定も、既存の福祉の枠組みではなく、今の社会の基盤である資本主義の中で障害のある人たちが正当な対価を手にできる仕組みを作るため。
同時に、障害のある人のアートという背景を知らなくても商品の魅力で選ばれるブランドであることが、結果的には障害や障害者福祉に対する価値観を変革することにつながるという信念の表れでもある。
「かわいそう」の悔しさが原点
双子の松田さんたちにとって、揺るがない使命感の根底にあるのは、4歳上で重度の知的障害を伴う自閉症の兄・翔太さんの存在だ。
幼いころから、兄弟3人はとても仲が良かった。だが一歩外に出ると翔太さんが馬鹿にされたり、「かわいそう」と心ない言葉を掛けられたり。
2人は何度も悔しい思いをしながら、世間が言う「ふつう」という価値観への疑問を募らせていった。
漠然と「将来は福祉に関する仕事をしたい」と思っていた2人がMUKUを始めたのは、ともに社会人2年目の夏。
東京の広告代理店で働いていた崇弥さんが帰省中に、地元・岩手の社会福祉法人が運営する「るんびにい美術館」(花巻市)で知的障害のある人たちのアートを目にしたのがきっかけだった。
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