「しにくい」を「しやすい」に変えるたった一つの技 車もイスも「ステイタス」だけで選ばれなくなった

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車と同じように、オフィスのイスも昔は「ステイタス」を分けるシンボルだった。一般社員は「ひじなしイス」、課長になると「ひじつきイス」、部長になると「背もたれが高いイス」になる。さらに、役員になると「革張りイス」が与えられる。イスを手配する総務の担当者も、役職がイスのグレードを決めるわかりやすい指標だったわけだ。

オフィス家具を提供しているコクヨ(ご存じない方もいるかもしれないが、コクヨは文具以外にオフィス家具メーカーとしても知られている会社である)としては、まことにありがたい話で、お客様から毎年「課長が増えたので、ひじつきのイスを5脚手配してくれるかな」といった注文があったものだ。

「ステイタス」から「働き方のちがい」へ

会社におけるポストのことを「部長のイス」というように、イスはステイタスをあらわすわかりやすいシンボルだったのだ。

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ところが、パソコンと長時間向き合う仕事が増えてきたことで、「ステイタス」ではなく「働き方のちがい」によってイスを分ける会社が増えてきた。

長時間座り続けてアシスタント業務をする社員に10万円以上する高機能のひじつきイスを提供し、あまり席にいない営業部門の社員のイスは5万円ほどのリーズナブルなものにするという分け方だ。

これによって社員は「働きにくい」から「働きやすい」に変わったのだ。

また、パソコンの分け方も変わってきた。昔は、高性能で高価なパソコンをベテラン社員に配っていたが、機能をほとんど使いこなせずにネットサーフィンばかりしていた。一方、資料を作ったり調べ物をしたりと忙しい若手社員には、処理速度が遅い「お下がり」のパソコンが配られて皆、苦労していた。「ステイタス」によって分け方を変えてしまっていた弊害が起きていたわけだ。

下地 寛也 コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント、エスケイブレイン代表

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しもじ かんや / Kanya Shimoji

1969年神戸市生まれ。1992年文房具・オフィス家具メーカーのコクヨに入社。デスクや会議室の配置などの「分け方」を研究したことをきっかけに、社会のさまざまなコト、モノ、サービスの「使いにくい」「わかりにくい」といった問題点は「分け方」で「しやすい」に変えることができるという提案をするように。現在はコーポレートコミュニケーション室の室長と同時に新しい働き方を模索して複業ワーカー(エスケイブレイン代表)としてのビジネススキルに関するセミナーや講演、YouTube動画配信などの活動も積極的に行っている。著書に『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの語彙力』(KADOKAWA)など。

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