「日銀の利上げ」を評価する30代の本音は「ズルい」 金融緩和で資産価格が上昇、「運用氷河期」の不満

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株価でも同じような計算をすることができる。日経平均株価を基準に賃金を実質化すると、不動産価格と同じような図表が作成できた。

むろん、株式投資の基準は利回りであり、株価による実質化にあまり意味はないかもしれないが、「買おうと思っていたらもう上がってしまっていた」という感覚には寄与するだろう。

株式投資しても実質リターンは低い

運用利回りの観点からも、コロナ後は低迷している。

TOPIXのPERの逆数である益回り(その企業の1年間の1株当たり利益が、その株価の何%を稼ぐか)を消費者物価指数で実質化することで「実質益回り」を求めると、金融危機後やアベノミクス直後と同様に低いことがわかる。

すなわち、株式投資によって期待される実質リターンが低いことになり、このことだけを考えると運用難の状況と言える。

実質益回りと実質賃金(前年同月比)を比較すると、ヒストリカルにみれば実質益回りの方が低迷していることがわかる。ここで、実質賃金(前年同月比)と実質益回りを加えたものが、労働と投資の双方から期待される今後の所得増加ペースだと考えると、現在はいずれも低迷していると言える。

この状況を打破するには、労働所得の増加率を上げるか、資産運用の利回りを上げるか、ということになる。労働所得は急激な変化が期待しにくいことを考えると、必ずしも日本経済には望ましいことでなくても、資産価格下落によって「買い場」が訪れることを望むという考えも理解できないことではないだろう。

「30代が日銀の利上げを評価する理由」は、このような「リセット願望」に近い考えなのだろうと、筆者はみている。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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