しまむら、カスハラ「出禁」対応で日本が変わるワケ 「お客様は神様」というスタンスから脱却へ

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しかし、コロナ禍を経た約10年間の間にカスハラを取り巻く状況は一変しました。カスハラが社会問題と認識され、従来の顧客対応では解決できない問題から従業員を守らなければならないという意識が広がりました。

また、大手牛丼チェーンでは「ワンオペ」勤務中の従業員が死亡したニュースが出た後に、売り上げは好調であるのに閉店を余儀なくされる店舗が続出しました。このように、企業が営利活動を続けていくためには顧客満足の前に「従業員満足」が不可欠であることが認識されたのです。

しまむらグループが強固なカスハラ対応姿勢を打ち出せたのにはこのような背景があります。今回の発表をうけ、顧客満足を追求してきた小売業にもカスハラ対策が普及するようになると予想されます。

小売業界におけるカスハラ対策が遅れてしまう理由

2022年に厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策マニュアル」が発表されると、交通・インフラ業界は次々と自社のカスハラ対策方針を公表してきました。

これらの業界は、サービスに不満を感じていたとしても利用客がそのサービスを利用しなくなることはほぼありません。たとえば鉄道会社の職員の対応に不満をもっていたとしても通勤などで電車を利用せざるをえないように、交通・インフラ業界はカスハラ客に対して「毅然とした態度で対応します」というスタンスを示すことが比較的容易なのです。

一方、小売業ではそうもいきません。小売業界は競争が激しく、商品やサービスに不備があると利用者はすぐに他店へ流れてしまいます。商品での差別化が難しくなるにつれて、丁寧なサービスで差別化を図ってきたため、カスハラ対策を下手に発表して、利用者から「あの会社は客のことを大切にしない会社なのか」と思われることは、最も避けるべきことだという考えが根強く残っているのです。

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