JR参宮線田丸駅「木造駅舎をあえて新築」の大転換 旧駅舎は老朽化で解体、町が雰囲気を「再現」

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一時は簡素なつくりの駅舎に建て替える計画があったようだが、町民らの強い要望を踏まえ、玉城町が約7300万円をかけ新たに交流施設として整備することになった。

2024年春に完成した「田丸駅交流施設」は木造瓦ぶきの平屋建てで、列車の待合スペースのほか、玉城町観光協会の案内所と交流スペースを設けた。朱色の柱のデザイン、駅名看板や花壇のレンガなどは旧駅舎から引き継いだ。駅は観光協会のスタッフが常駐する“有人駅”となった。

玉城町まちづくり推進課の藤井亮太さんは「たくさんの人が訪れる伊勢市の隣に位置している玉城町にも、観光で立ち寄って滞在してもらえるきっかけになれば。町の発展の中心となってきた田丸駅を地域住民同士や観光客との新たな交流の場として活用してもらいたい」と話す。

田丸駅 新駅舎入り口 駅名看板としめ縄
新駅舎入り口の駅名看板は旧駅舎から再利用。地元の産品のしめ縄は伊勢地方では一年中飾る(記者撮影)

伊勢市に隣接する好立地

玉城町は人口約1万5000人。古くから伊勢・熊野・大和への街道が交わる宿場町として栄えた。町のシンボルは駅北西に位置する田丸城跡。1336年に南朝の北畠親房が玉丸山に築城、1575年に北畠家に入った織田信長の次男、織田信雄が三層の天守を築いたと伝わる。

田丸駅 停車する気動車
通学の足として利用される参宮線の各駅停車。画面右奥が田丸城跡(記者撮影)

天守跡や石垣、堀が往時の威容を物語っており、2017年に日本城郭協会の「続日本100名城」に選ばれた。堀の内側には町役場や、地元出身で名誉町民になっている朝日新聞の創始者、村山龍平の記念館がある。沖縄県の旧玉城村(たまぐすくそん、現・南城市)とは1993年に姉妹都市の盟約を結んでいる。

車社会の進展でにぎわいが商店街から郊外の大規模商業施設に移ったとはいえ、長く町の顔だった駅舎をバス停のように簡素に造り替えてしまうのは忍びない――。鉄道が通っていることが町のみなの誇りだった当時を再現したような田丸駅の立派な駅舎は、駅という公共施設の新たな役割を示しているように見える。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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