JR参宮線田丸駅「木造駅舎をあえて新築」の大転換 旧駅舎は老朽化で解体、町が雰囲気を「再現」
参宮線はいまから130年以上前の1893年、私鉄の参宮鉄道によって津駅―宮川駅間が開業。1897年に現在の伊勢市駅まで延び、国有化された後の1911年に終点の鳥羽駅まで延伸した。戦前は伊勢神宮への参詣路線として全国各地から列車が直通し、複線区間もあった。戦後になって、参宮線だった亀山駅―多気駅間は紀勢本線に組み入れられた。1972年までは東京と鳥羽を結ぶ夜行急行列車も走っていた。
近鉄とJRの双方が乗り入れる伊勢市駅は改札も共通。外宮に近いのはJR側の改札で、4番線と5番線しかない近鉄のホームからは長い跨線橋でJRの留置線を渡る必要がある。伊勢市から鳥羽方面では、山あいをまた直線的に結ぶ近鉄線に対し、海の近くを走る参宮線は二見浦の名所の夫婦岩へもアクセスできる利点がある。
多気駅―鳥羽駅間の途中駅ですべての快速みえが停車するのは伊勢市と二見浦の2駅のみ。そのほかの外城田、田丸、宮川、山田上口、五十鈴ケ丘、松下の各駅へは、とくに日中はワンマン運転の各駅停車で行くことになる。そのうちの1つ、度会郡玉城町にある田丸駅が最近、大きな転換点を迎えた。
玉城町の玄関口
多気駅―伊勢市駅のほぼ中間にある田丸駅は近鉄が通らない玉城町で唯一の鉄道駅。1893年の参宮鉄道開通と同時に開業した。大正元年(1912年)に建てられたという木造駅舎は、松阪や伊勢の地にゆかりがある小津安二郎監督の映画『浮草』にも登場した。町の玄関口として長く住民に親しまれていたが、10年ほど前には無人駅に。建物も老朽化が目立つようになり、耐震面で問題があることが判明、2023年に取り壊された。
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