NHK「受信料バブル」から1000億円削減への不安 「中国籍スタッフの不適切発言」はなぜ起きた

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その前にまず、2010年代にNHK受信料収入が急増し、一種のバブル的な期間にあったことを指摘しておきたい。

NHKの事業収入はほとんどが受信料収入。2012年度には6604億円だった事業収入が2018年度には7372億に膨らんだ。その差は768億円。2010年代に1割以上収入が増えたテレビ局は民放にはないだろう。

(グラフ:NHK事業報告書より筆者作成)

2011年7月に地デジ化が完了し、多くの家庭がBSも見られるようになった。結果、BSが映るならとNHKの「衛星契約」が増えたのだ。ぐんぐん収入が増えてもNHKは職員の給与を上げにくい。下手に上げたら世間からとやかく言われるからだ。だから2010年代には番組制作費を増やした。セットが豪華になったりタレントを贅沢に使うようになったり番組が面白くなったかもしれない。

言ってみればNHKはこの10年間ほど「受信料バブル」に沸いていたのだ。自分たちの努力というより、地デジ化で多くの家庭の受信形態が変わった結果のあだ花的な収入増だった。

2020年以降の「テレビ離れ・NHK離れ」

ところが2020年以降、急激に事業収入が下がっている。まるで「バブルが弾けた」ようにどんどん下がった。「テレビ離れ・NHK離れ」が始まったのだ。なのに、2023年度は受信料を値下げした。約1割というインパクトの大きな下げ幅だ。事業収入のダウントレンドに弾みがついてしまった。

前会長の前田晃伸氏が実施したのがこの大幅値下げだ。ただ、前田氏が行ったというより、自民党が下げさせたというべきだろう。2021年に菅政権が値下げを宣言し、武田総務大臣がNHK予算案に意見をつける形で値下げに言及した。NHKに意見を述べるのは介入ではないと2022年2月2日の会見で武田大臣は述べているが、介入かは別にして総務大臣が言ったらNHKは従わないわけにはいかないだろう。菅-武田ラインで携帯電話料金を下げて国民にウケた流れではと見る人もいた。

前田会長も経費削減に積極的だったこともあって、2023年度に大幅値下げが実施された。そのせいでこの年度は136億円の赤字になっている。

自民党に値下げを強いられNHK会長もそれを受け入れて実施したが、赤字になった2023年度は岸田政権に代わっており、会長も稲葉延雄氏になった。NHKという公共放送が赤字になった責任を誰も取らないのはどうなのか。運営の原資は我々が払っている受信料なのに。

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