社員の家にイモを送ったら業績が回復した! 将を射んと欲すればまず馬を射よ

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吉寿屋さんは大変に儲かっていて、売上高営業利益率は業界NO.1だそうです。お菓子の問屋ですが、お店もいっぱいお持ちです。フランチャイズを考案され、「お菓子のデパートよしや」というお店が直営、フランチャイズ合わせて全国に100店舗以上あります。

この間のリーマンショックのあとに、この会社も、初めて売り上げが落ちました。その時に神吉武司会長がとった手が面白いので、ご紹介します。

社員宅にジャガイモを送る

社員全員の家にジャガイモを送る(写真:nimo / PIXTA)

まず、北海道のカルビーの工場からジャガイモを仕入れて、全従業員の家に送りました。対前年売り上げが落ちているのにメッセージ付きで送ったんです。

「会社、売り上げ前年割れになった。ここはみんなで頑張ろう」

ごちゃごちゃ書かんと、チョットだけ書いて送りました。次の月は、全従業員の所にカボチャを送りました。3カ月目は、丹波の篠山から黒豆を仕入れて送りました。そうしたら、4カ月目から売り上げが戻ったそうです。

従業員の奥さんは「なんや、お父ちゃんの会社、急に毎月、いろんなもの送ってくるなぁ」と思いながら、ふとメッセージカードを見ます。そこに業績が落ちている、と書いてある。「お父ちゃん、あんたの会社、いいところやないの。苦しいのにこんなにしてもろて。あんたもしっかり頑張らなあかんで」と言います。

普通の営業マンは夕方の5時ごろ、そろそろ会社に戻らなあかんな、あと30分しかないな、ちょっと喫茶店で休憩して帰ろか、となります。でも、こちらの営業マンは違います。あと30分しかないけど、いつも会社からいろんなもの送ってもらってるな、よっしゃ、もう一軒回って帰ったろ、となります。

この「もう1軒」が、ほかのお菓子の問屋さんとの差別化になって、売り上げを伸ばし、対売上高営業利益率トップを達成したんです。従業員が、今日は会社に行きたくないな、と言っても、あんた会社に行きなさい、と奥さんが背中を押すわけです。そういう仕組み作りがされてるんです。

普通だったら、売上高が落ちると「みんな働け、頑張れよ」と社長が言い、経費削減に走ります。が、こちらでは奥さんが社長に代わって「あんた、頑張りや」と言わせているんです。将を射んと欲すればまず馬を射よ、です。

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