「ロード・オブ・ザ・リング」新作、汚名返上なるか 悪党サウロン主役のAmazonドラマ「力の指輪」

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とはいえ、思惑通りにはなかなかいきません。2022年9月に世界配信されたシーズン1は苦戦を強いられてもいました。作品のクオリティとしては、いまだに愛される映画版に勝るとも劣らない映像美があり、ファンタジー作品の肝となるセットや衣装、VFXに至っては文句の付け所がありません。不老不死エルフ族の森や人間が住むヌーメノール王国の港の映し出し方は圧巻でした。

主演女優のモーフィッド・クラークは不老不死種族エルフのガラドリエル役を好演(画像:©Amazon MGM Studios Prime Video)

主演女優のモーフィッド・クラークも高く評価されています。ケイト・ブランシェットのイメージが強かった不老不死種族エルフのガラドリエル役をものにし、感情が乗った演技です。

ただし、一部の配役に不評を買います。なかでも「黒人のエルフ」という設定が炎上案件となり、拒否反応を示す声が多く見受けられました。これを理由に作品そのものへの興味をなくした人も一定数いたのかもしれまれん。大概は作品力があれば多少の違和感などは吹き飛ばしてくれるものですが、肝心の出だしで惹きつける力が足りなかったことが低い評価につなげたのだと思います。

つかみが甘かったワケ

正直なところ、乗ってくるのは全8話あるシーズン1の4話目からです。離脱を防ぐために1話目からつかみがうまい作品が並ぶなかで、Amazon版「力の指輪」は自ら不利な状況を作り出しているのです。

それには理由がありそうです。序盤で世界観やキャラクターの人となりを丁寧に描くことで徐々に沼らせる戦略なのでしょう。シーズン5まで計画しているため、多少のリスクがあってもスロースターターで走り出すほうが結果的に見応えのある作品になる可能性が高いからです。話数が多い良作の韓国ドラマにもよくあるパターンです。

8月29日に3話まで公開された「力の指輪」シーズン2を見る限り、シーズン1の後半戦からの勢いそのまま1話目から飛ばしていますから、戦略的であることが確信できます。現場総責任者の1人、J. D. ペインの言葉からも納得します。

配信直前にシンガポールで行われたアジア・プレミア上映イベントにキャストたちと参加した現場総責任者J. D. ペイン(写真右端)(筆者撮影)

シーズン2が世界配信される直前の8月22日、シンガポールで行われたアジア・プレミア上映イベントに参加したJ. D. ペインに直接話を聞くと、シーズン1は例えるなら、「チェス盤に駒を並べた段階」だそうです。「馴染みのない人にもわかるようにまずは『中つ国』の時間軸を説明し、大悪党のサウロンを登場させて、その正体を明らかにするために作り込んだ話だった」と語っていました。

ファンタジー作品の常連である架空の生物オークの特殊メイクのクオリティも高い(画像:©Amazon MGM Studios Prime Video)
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