トップリーダーには「話す前」の共通点があった 口下手でも準備をすれば人前で話す力は習得できる

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安倍晋三元首相は97代目内閣総理大臣時の2015年4月29日、アメリカ議会の上下両院合同会議で演説を行いました。日本の首相がこの会議で話すのは初めてで、一世一代の舞台だと注目されました。

45分間にわたる英語による演説の後、会議場からは割れんばかりの拍手が沸き起こりました。その中には、立ち上がり手を叩くバイデン副大統領(当時)の姿もありました。

このときのスピーチライターであった谷口智彦氏はのちに、この演説の実施が決まったのが約40日前であったこと、原稿作成を始めたのは1カ月前だったことを明かしています。そこから安倍氏の猛練習が始まったのです。

毎日毎日、自宅で大声を張り上げ練習し、昭恵夫人が「わたしまで覚えちゃいそう」と語ったほど。

その後は、アメリカに向かう政府専用機のなかでも米迎賓館についてからも練習を続けていたといいます。演説前夜には、オバマ大統領(当時)が「今夜も明日のスピーチの練習をするらしいから」という言葉で宴のお開きを宣言したエピソードも紹介されています。アメリカ大統領も彼の一途な努力を認めていたのでしょう。

さらに世界が注目したのは、演説後に「ウォール・ストリート・ジャーナル」が報じた1枚の写真でした。

演説中の安倍氏を後ろから撮影したその写真には、英語で書かれた手元の原稿がはっきりと映し出されています。そこには練習の跡がはっきりと見てとれました。ピンクのマーカーで大事な部分に線を引いたり、イントネーションを示す記号をつけたり。

日本語で「顔上げ、拍手促す、収まるのをまち」などの伝え方の注意点も書き込まれたりしているのがわかります。なかには、聴衆の人の名前を並べた手書きの原稿もあり、話す直前、もしかしたら1分前まで推敲していた跡がうかがえます。

練習であなたもトップリーダーばりの話す力を表現できる

準備や練習の量と、成功の数は比例します。事前に十分な準備と練習をすることで、あなたも人前で堂々と伝わる話し方ができるようになります。

もしかしたら、「いつものメンバーしかいないから」「大したプレゼンじゃないから」と、練習なしに本番に挑んでいるという方もいるかもしれません。他の担当者が作ったスライドに当日ざっと目を通しただけで本番に挑むというケースも、時間の制約上やむを得ない場合もあるでしょう。

そうはいっても、トップリーダーのような大変な準備は自分にはできない。むしろ、正直そこまでやりたくない。内心そう思っている方に朗報があります。話し方が少しでもうまくなりたいなと思うなら、今こそ楽に実現することができるタイミングです。

なぜなら年々スピーチトレーニングは、より簡単に、より手軽になっているからです。その理由は技術の進化です。

私が指導を始めた21年前は、道具をそろえる必要があり時間もかかりました。例えば、本書でも紹介している「自分の話している様子を録画し文字に起こす」という方法。

今ではスマホで簡単に録音ができ、AIを使えばものの数分で文字起こしデータが出力されます。以前は何日もかけて苦労していた資料作成も、AIでプロのようなスライドや動画、表やグラフを簡単につくることができます。今ほど、簡単に効率よく、世界のトップリーダーのスキルをマネできる時代はないのです。

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