なお、8月19日に判明した7月貿易統計によれば、物価や為替変動の要因を控除した実質ベースで7月分の輸出は前月比+0.9%と2か月連続で増加した。
同統計から判断すれば、輸出のボトムは5月で、夏場にかけて米欧向けを中心に輸出は緩やかながらも持ち直しているとみられる。これは鉱工業生産統計において製造業が7、8月に増産計画を打ち出すなど、5月をボトムに生産活動が持ち直していることと整合的である。
日本経済は踊り場を経て、再び回復へ
これらを踏まえると輸出を中心に春先からブレーキがかかった日本経済は、一時的な踊り場を経て、緩やかながらも再び回復に転じつつあるとみられる。もちろん、値動きが激しい株式市場動向を含めて中国経済は未だに不安定で経済指標も脆弱だ。輸出がこのまま回復するかは不透明な部分が残る。だが中国政府による財政支出政策や、金融緩和強化の一環として通貨切下げに踏み出しており、これらの景気安定化策によって中国経済のハードランディングは回避されると当社では考えている。
一方、日本の株式市場の観点からみると、多くの企業が過去最高益を更新し、4-6月期の上場企業の決算でも増益率に衰えが見られていないので、日本経済が踊り場入りしたことを示す経済指標に違和感を持たれる方もいるかもしれない。
実際には、2014年10-12月以降日本経済は回復して名目GDPも増えているが、それは主に企業業績の改善という格好で現れているとみられる。
昨年半ばから、労働市場においても、失業率低下や有効求人倍率の改善などでわかるように、市場の回復は続いている。それに応じて賃金も上昇し始めた。だがまだそのピッチは鈍く、景気回復の恩恵が企業部門にとどまっている側面がなお大きい。
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