有機農業への関心が高まるなかで、世界の流れとして、土への関心が近年大きく浮かび上がっているのは、本質に迫っている気がします。
土はこれまで目立たない存在でした。土そのものの理解が必要と気づき、その複雑さがわかってきたのは最近のことなのです。そして今、土壌革命という言葉が生まれるほどに、土の重要性が注目されています。
その理由には、土にあまり目を向けず、農作物の生産性を上げることだけに注目して農耕を行ってきたために、土の質が落ちてきた危険性に気づいたことと、複雑な土の実態の研究が進んだこととの両面があります。
私たちは今、農耕を考えるなら土から始めなければならないという知見を得たのです。生きものも土も複雑な自然であり、科学もやっとこれに注目するところまできたというのが実情です。
そこで、狩猟採集から農耕への移行を「土を知るところから始めよう」というのが、生命誌の提案です。1万年前の人がそこに気づかずに農耕を始めたのは仕方のないことですが、今なら「土」から始められるはずです。
ここでまず土とは何かを確認します。土は、1人の人間としては子どもの頃から、人類としては古代から接してきたものなので、土ってなあにと考えることはほとんどありません。
しかし、今や土を知ることが大事なので基本をまとめましょう。
原始の地球には「土」はなかった?
原始の地球は岩石(地殻)と水(海)とでできており、土壌はありませんでした。意外に気づいていない人の多い事実です。
地表地殻の岩石は少しずつ破砕されていきます。これを「風化」といい、地表の温度変化に伴う膨張・収縮や、雨・氷雪に長期間さらされて起きる「物理的風化」と、化学反応によって岩石の成分が水に溶けたり分解したりして起きる「化学的風化」があります。いずれにしても地表に小さな石ができ、さらには砂になっていきます。
これだけでは土にはなりません。
地球に、あるとき生きものが生まれます。40億年ほど前の海には、現存の生きものの祖先となる細胞が存在したことは確かですので、ここを出発点にします。
海中での進化によって多様な生きものが誕生し、5億年ほど前になってやっと上陸が始まります。なぜ地球に生きものが存在するのかと考えると、そこに水があったからという答えになるでしょう。
日常私たちは、水は必要なものと思って過ごしていますが、水の意味はそれ以上であり、水があってこそ生きものがいるという関係なのです。
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