カルビー「フルグラ」、4年で年商5倍の裏側 あえて「脇役」に徹して「主役」を狙う戦略とは

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どうやって、和朝食市場から顧客を取り込もうというのか。実は、同社は和朝食の定番「卵かけごはん」の代替まで考えているのだ。

まず、8月末に「フルグラ 黒豆きなこ味」を発売する予定だ。牛乳や豆乳をかけて、フルグラ黒豆きなこ味を食べるのは普通。これだけではなく、和朝食からのスイッチを促すべく、なんと「卵かけごはん」ならぬ、「卵かけフルグラ」メニューまで考えている。

すでに同社は、京都の老舗料亭「菊乃井」の主人・村田吉弘氏監修の下、フルグラきな粉味と温泉卵を混ぜた和食のセット料理を提案している。フルグラに、温泉卵、豆乳ヨーグルト、鮭フレーク、刻み海苔、いりゴマを混ぜ、これに醤油を垂らして食べる。

京都の老舗料亭「菊乃井」の主人・村田吉弘氏監修の「和のフルグラ」メニュー。無理筋か、それとも受け入れられるか

村田氏曰く「卵かけごはんのようなものだと思って食べてもらえれば」。和食はおいしいが、ご飯を炊き、魚を焼き、みそ汁を作って・・と手間がかかる。朝食の支度が一段としんどくなるシニア層の取り込みも狙っているのだ。

目先の主役にこだわらない

「良いものやおいしいものを作れば自動的に売れる」と考えるのは、売れないメーカーの発想だ。また、フルグラで成功する前のカルビーのように、既存のマーケットの中で一生懸命「他社との差別化」をアピールしても、その努力は消費者には届かない。

もともと秘めていた価値や魅力を、世の中にどうやって伝えるべきか。「ポジショニング転換」という手法によって、主役であるかどうかにこだわらず、マーケットそのものを拡大させたフルグラの成功は、ビジネスの面白さをわれわれに教えてくれる。

「フルグラを国民食にしていきたい」と語るカルビー。今は「脇役」のポジションだが、そう遠くない将来、「朝食の主役になる日」がやって来るかもしれない。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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