「60代以降に衰える人」が"無意識"にしていること 中高年が陥りやすい「不健全思考」とは何か

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たとえば、あなたが知り合いと街ですれ違い挨拶しようとしましたが、相手はあなたに目を向けないで通りすぎました。あなたは、無視されたようで心が悲しくなります。先に話したように脳はネクラですから、ネガティブ思考が発動して、「私は嫌われている」という結論を出します。

ポジティブ思考と健全思考の違いは?

一方、ポジティブ思考で考えると、「あんな人に挨拶してもらわなくても平気だわ」「もとから嫌なやつだと思っていた」と、自分を相手より高くもっていきがちになります。これを健全思考で眺めてみましょう。

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相手は、あなたに気がつかなかっただけかもしれません。なにか心にとらわれていることがあったのかもしれません。ご家族が入院していて、症状が深刻だという診断で心が悲しみでいっぱいだったり、心配事で余裕がなかったのかもしれません。

街をゆく人がみんな他人に気を配って歩いているわけではありません。人はそれぞれ事情がある、そういうふうに考える癖をつけることが健全思考となります。今あげた例のように、挨拶を返してくれなかったという悪感情が残り、嫌な気持ちを忘れられない人もいます。そうではなく、さっと論理思考を働かせ、挨拶されなかったことなど「まっいいか」と忘れることが大事なのです。

他人が黙っているのを見て、怒っているのだろうと決めつけたり、そっけない態度をされたら嫌われていると思い込んでしまう。そんなふうに感情でものごとを決めつけないで、健全思考を起動させることがとても大切です。

保坂 隆 保坂サイコオンコロジー・クリニック院長

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ほさか たかし / Takashi Hosaka

1952年、山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科入局。東海大学医学部教授、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』『精神科医が教える60歳からの人生を楽しむ孤独力』『精神科医が教える すりへらない心のつくり方』などがある。

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