マネーボール --日本にこそ求められる「経営改革」《宿輪純一のシネマ経済学》

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 「この案件はリスクがないんだよ」などと、企画会議で“安全第一”の発言をするおじさん世代がいちばんの“反改革”であろうか。

マネーボール理論は出塁率を最優先するために、言い方を換えると、やや地味な野球になる。われらが松井秀喜選手が現在、アスレチックスで働いているのも、ホームランバッターだった彼を知っている者には、よく考えると微妙な感じもする。
 
 入団のときにビリー・ビーンと松井選手が一緒に映った映像は今でも覚えている。実際、この米国でのプレミアでは松井選手もブラッド・ピットと舞台に立った。

しかし、金融も専門の1つである筆者にとって、原作者がマイケル・ルイスというのが驚きであった。彼はウォースストリート系と認識していたからである。彼は筆者よりも3つ年上の60年生まれ。米国人であるがロンドンで経済学修士を取得し、今はなき名門投資銀行のソロモン・ブラザースで債券セールスマンとして活躍した。
 
 89年に債券セールスの裏側を描いた『ライアーズ・ポーカー』でノンフィクション作家としてデビュー。以降の、『ニュー・ニュー・シング』や『ネクスト』などの作品は、筆者は気に入っている。なお、この『マネーボール』は2003年の作品だ。



しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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