45歳以上は知らない「学校で教わる"新常識"」 「家庭科の教科書」にギャップを埋めるカギ

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篠田:若い人たちが将来を不安に思っている要因はもうひとつあると思っていて、それが世代間ギャップではないかと思っています。

私は仕事柄、働く人たちの話を聞く機会が多いのですが、とくに大企業などで、40〜50代の管理職の方がいて部下の方が20代だったりすると、「いまの若い人たちの考えが全然わからない」と聞くことが多い。断絶してしまっている。

小林美礼(こばやし・みれい)/全国家庭科教育協会常任理事。日本女子大学院家政学研究科修士。専門の家庭科教育では、よりよい生活と未来について考え、社会の課題を本気で考える授業を目指す。国立大学法人筑波大学附属中学校(先導的教育・国際教育・教師教育拠点校)に勤務し、管理職として学校経営にも関わった。日本教育大学協会中学校部会会長、全国国立大学附属学校連盟副校長部会会長などに従事。筑波大学院キャリアマネジメント講師、筑波大学教員免許状更新講習講師を務めた。現在は家庭科の教員養成のために、複数の大学で講義をしている。人がよりよく生きることや、あらゆる世代の「ウェルビーイング」向上を願う。中学・高校の家庭科教科書編著者。近著は『「命のバトン」で育てる体』国土社(写真:本人提供)

小林:これは東京のデータですが、いま、中高生のうち3世代で生活しているのは40人のうち2人ほどです。そうすると、日常的に高齢者と接する機会がない。子どもたちに「高齢者のイメージは?」と聞くと、もうショックを受けるくらい本当に悪いイメージです。「老害」という言葉を鵜呑みにしているんですよね。

篠田:祖父母と同居している人が少ないのはたしかにその通りですね。私自身を振り返ると、祖母が隣に住んでいてかなり高齢になるまで元気だったので、歳をとることに対してポジティブにいられた。

小林:そこで中学生に、高齢者の方にインタビューをする機会を作ったことがあるんです。「ご自身がどんな人生を送り、若い人たちにどんなことを伝えたいのか」を聞いてきてもらった。すると、中学生たちは知らなかったこと(人生のヒントなど)をたくさん聞けて非常に楽しかったと言っていました。

さらに、生徒たちが、インタビューに応じてくれた人が喜んでくれるプレゼントを考えて作るという取り組みもしたのですが、「脂質を控える食事について調べてプレゼントした」とか、「ネックウォーマーを編んでプレゼントした」といった生徒もいて、こういう交流があるだけで、中学生も高齢者も幸福度があがると感じました。まず身近な人に関心を持ち、話を聞いてみる、そんなことの延長線上に異世代理解のヒントがあるような気がします。

家庭科の教科書が「ライフ・シフト」を教えている

篠田:異なる世代と触れ合う機会が減ったいま、学校カリキュラムの中で、そういった接点を作ることは非常に重要ですね。先生のご専門の「家庭科」では、どのようなことを教えているのでしょうか?

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