シミュレーターの実物を見ると、相当に大きなもので驚いた。作動する空間の大きさは、縦15m×横15m×高さ10mもある。
そこに、水平方向に移動するための3つの作動軸、さらにその中心に6つの作動軸があり、その上にドライバーが乗車する車体があるという形状だ。
キモは、水平方向への「移動量が大きいこと」と、ドライバーの操作に対するシミュレーターの「応答性の高さ」にある。
つまり、クルマのレスポンスが速いことで、Gがうまく立ち上がるのだ。
今回、試した走行シナリオは、アメリカ西海岸のフリーウェイ。片側4車線あり、このうち中間の2車線を時速100キロ程度で走行しながら、何度か車線変更するというものだ。
実感としては、“本物のクルマを操っているよう”だった。
路面の状況に関するデータも自動車メーカーなどから提供されているため、実際はタイヤが未装着で宙に浮いている状態なのに、路面との設置感があり、実車のようなG変化を全身で感じ取ることができるから驚きだ。
ビジネスは「シミュレーターそのもの」ではない
とはいえ、S&VLの事業は、こうした機器を販売することが主な目的ではない。
「性能開発のプロセス構築から、実車相当の車両モデル開発、車両OEM品質の実走行実験までのワンストップ・ソリューションの実現」を目指すとしている。
近年、欧米や中国では、専門性の高い最新技術に特化した、自動車メーカーと直接の資本関係がない、独立系のテクニカルサポート企業が増えてきている。
同社を設立したプログレス・テクノロジーズグループは、2005年の創業以来、こうした領域での事業展開を進め、2022年6月から最新型ドライビングシミュレーターを使ってリアルとバーチャルを融合する、いわゆる“デジタルツイン”のサービスを始めていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら