クルマ本体の動力性能を測るために、シャシーダイナモという装置がある。これはそのEV版だといえる。
特徴のひとつが、別室にあるバッテリーエミュレーターの活用だ。バッテリー容量やSOC(ステート・オブ・チャージ)などをコントロールしながら、EVの走行をシミュレーションできる。
また、走行の評価項目を、AVLが自動車メーカーや自動車部品メーカー各社と意見交換をする中で設定し、AVL独自の評価基準によってEV性能の“見える化”も行っている。
このほか、AVLが近年、研究開発に注力しているのが、バーチャル車両における環境試験だ。
粒子法理論を用いるもので、従来のバーチャルな解析に比べて、リアルに近いイメージを実現できる。たとえば、車両が冠水した道路を走行する場合の、水面の変化などが“見える化”できるのだ。
同社関係者によれば、この手法をさらに深掘りしていくと、さまざまな走行環境で路面からの力や振動、加速度(G)変化による自動車各部・部品各所にかかる応力やひずみを、従来よりもリアリティを高めた状態で数値化することが可能になるという。
DXという手段をどう使うか?
今回はS&VLとAVL、2社の量産車開発向けシミュレーション技術を紹介した。クルマを開発して量産するというプロセスにおいて、近年は電動化、コネクテッド、自動運転技術など、多様な領域でデータ検証を行うことが求められている。
デジタルツイン、バーチャル、データ主義、モデルベース開発など、量産化開発のプロセスにおいて、高度な管理体制を求める自動車メーカーや自動車部品メーカーが増えているからだ。今後も、各種のシミュレーション装置による技術開発が進むことは、間違いないだろう。
そのうえで、改めて感じるのは「人を中心としたものづくり」のあり方だ。DXは、あくまでもその手段のひとつなのである。日本らしい次世代のクルマ作りが、若い世代を中心に進化していくことを祈りたい。
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