日本の財政破綻は起こるのか起こらないのか ギリシャ問題を機に日本の財政を考える

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小幡 績(おばた せき)/1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現財務省)入省、1999年退職。2000年IMFサマーインターン。2001年~3年一橋大学経済研究所専任講師。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。'03年より、慶應義塾大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授。国家公務員共済(KKR) 運用委員。元年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)運用委員。行動派経済学者として知られ、TV、雑誌等のメディアのほか、自身のブログ等でも積極的に発言。現在連載中の東洋経済オンラインのコラムも評判。主な著書に『円高・デフレが日本を救う』『リフレはヤバい』(ディスカヴァー)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社)等。

小幡:古川さんは国家財政が破綻すると「ハイパーインフレ」「国債の暴落」「予算カットと増税」「円の暴落」が起こるとおっしゃっていますが、このうちの3つは、直接起こることではありません。

そして、この3つが起きなければ、国家財政破綻の影響は最小限で済みます。たとえば、ギリシャは、自国の通貨ではなくユーロを使っていますから、ハイパーインフレと自国通貨の暴落は起きず、国債も実質的に民間に対しては発行できない状態ですから、実は、財政破綻が経済に波及する影響は限定的です。

だから、皮肉を込めて言えば、チプラス首相とEUは、「予算カットと増税」についてにらみ合いを続けることができたのです。日本も、政府財政の問題を民間経済の問題に波及させないことが重要です。

――素人のツッコミをしますが、IMF管理下に入った韓国などがその後、発展をした。ギリシャとの比較をするよりも、韓国と比較をしたほうが日本からみるとわかりやすいような気もしますが、どうなのでしょうか。

小幡:当時のアジア通貨危機の問題は、民間経済のバブル崩壊が、通貨暴落をきっかけに起きたという問題なので、まったく比較できません。また、改革は進みましたが、犠牲ははるかに大きく、わざわざ経済全体を破綻させるということはあり得ませんし、望ましくありません。政府の財政破綻とは別なのです。

――なるほど。続いて2つ目のテーマに移ります。日本の通貨・円について伺います。円安傾向が続いていくと何が起こるのか。

円安傾向が続くとどうなるのか

小幡:円安は最悪ですね。通貨の力は国家の力です。資本主義は自国の通貨を強くし、それを広める戦いです。自ら弱くしていくのは愚かなことです。

水野:まったく同感です。円安に誘導して輸出を増やすといっても、実際にはそういったことは起きていません。経常赤字が黒字化したのは、原油価格が少し下がったことによる影響です。

そもそも、輸出で稼ごうというのは時代遅れの重商主義的な考え方です。需要のあるところに拠点を構えて、そこで得た利益をすべて日本に還元しようというのは、植民地主義的発想です。利益は当該国に還元すべきなのです。したがって、円安は日本を貧乏にするだけで、利点はありません。

次ページ3つ目のテーマ「資本主義は終わるのか」
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