日本の財政破綻は起こるのか起こらないのか ギリシャ問題を機に日本の財政を考える

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水野和夫(以下、水野):私は、必ず日本が財政破綻すると言われると「そうかなあ」と思いますね。それ以前に、起きないようにどうするかを考えるべきでしょう。

ただ、古川さんが著書の中でも主張している「金利の上昇が破綻のトリガーになる」という点は、そのとおりだと思います。ではどうしたらいいかというと、まず1000兆円超の借金については、返してもらうことをあきらめることです。国債を現金化したい人には市場でスムーズに行えばいいのです。全員が明日換金の要求をしないようにすることが大事です。預金者は、日本という大赤字の会社に出資したのだと思い、利息ゼロを受け入れるしかありません。

財源を確保するため消費税を上げるという案も耳にしますが、それを行うのは、所得税の逆進性、法人税負担率の低い企業が多いこと、これらの問題を解決してからです。

志賀櫻さんは、最大のタックスヘイブンはケイマンではなくウォール街、次がロンドンのシティだと言っています。アマゾンやグーグルは、どこの国に対しても見合った額の税を納めていません。こういった企業を優良企業ともてはやすのは、間違っているのではないでしょうか。

多くの収入を得ている個人についても同様です。ジョージ・ソロスはもっと自分に課税すべきだと言っています。

国家財政が破綻した場合、最大の被害者は国民である

古川元久(ふるかわ もとひさ)/1965年愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。米コロンビア大学大学院留学。94年退職。96年に民主党結成に参加し衆議院議員初当選(愛知2区)。以降7期連続当選。内閣官房副長官、国家戦略担当大臣・内閣府特命担当大臣(経済財政政策・科学技術政策・宇宙政策)などを歴任。開発途上国の飢餓と先進国の肥満や生活習慣病の同時解消を目指すNPO法人「TABLE FOR TWO」の創設に参加するなど社会貢献活動にも取り組む。主な著書に『財政破綻に備える 今なすべきこと』(ディスカヴァー)、『はじめの一歩』(PHP研究所)、『新・資本主義宣言』(共著/毎日新聞社)など。

古川:私が提示している「国家財政が破綻する」というのは、最悪のシナリオです。突然そうなる訳ではありません。それに至るには段階があります。大事なのは、最悪のシナリオを想定し、各段階で、なんとかしてそこに至らないように最大限の努力をすることです。

そもそも国家財政が破綻した場合、最大の被害者は国民です。ギリシャで銀行の前に長蛇の列を作っていたのも、一般庶民です。万一、財政破綻が起きてもこういった普通の人たちの最低限の生活が確保され、被害が最小限に食い止められるように今のうちから準備をしておく必要があります。

私の政権時代の経験上でもそうですが、時の政権は基本的に現在の政策がうまく行くことしか考えません。最悪のケースを考えてそれに備える政策を考えることはできないのです。ですからそうした想定と準備こそ、政権交代を目指す野党はしっかり準備しなくてはならないと思います。本当に財政が破綻するような事態となれば、その時にはもう一度政権交代が起きる可能性は高いと思いますから、それに備えた準備はしておかなければならないと思っています。

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