日本の財政破綻は起こるのか起こらないのか ギリシャ問題を機に日本の財政を考える

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水野 資本主義2.0とは、「電子・金融空間」(バーチャル空間)で利潤を追求する資本主義のことを指しています。1.0は「実物投資空間」(地理的空間)で利潤を追求します。1.1が「地中海資本主義」でこれは16世紀はじめに終焉し、大航海時代を契機の1.2が工業化・都市化が進んだ近代資本主義です。日本の1億人が求めた「三種の神器」が広く行き渡った時点で近代資本主義は「より遠く、より速く」の使命を達成しました。しかし2.0の世界になっては、「電子金融空間」で利ざやを稼ぐことは1億2千万人が広く要求しているものではありませんよね。

議論は白熱しました

小幡:僕は、資本主義は有史以来のものであり、水野さんの言う近代資本主義は死んでも、新しい時代の資本主義の形に進んでいくだけだと思っています。これまでの資本主義と国民国家は、ともに終わるでしょう。

水野:突き詰めれば、フロンティアがなくなってしまったことが影響しています。いまや宇宙空間か海底しかない。宇宙空間に行って、宇宙人と出会ったとして、交易を行う際の為替レートはどうするか、あるいは相手とそもそも交易をできるのか、という悩みもある。だいたいにおいて人類は好戦的なので、宇宙人と出会うといいことにならないかもしれない。だから、私は宇宙人とは出会わないほうがいい、と思っていますけれども。

資本主義でいう資本を「石ではなく種子だ」と定義すると、いくら資本を投入しても実はならないのがゼロ金利ですので、やっぱり資本主義はもう終わっています。「電子・金融空間」で資本を投下して、それが実であると考えれば、資本主義は今後、形を変えて生き延びるのでしょうけれども、そこでなる「実」は99%の人々にとっては幻影なので、資本主義2.0は認めるわけにはいかないのです。

――いったん無くなってしまったように見えるフロンティアを再開発ということで、また開発するべき周辺に変わっていくということはできないのでしょうか。

水野:再開発というのは、その一方で空き家が増えて過剰資本の問題が起きたり、非正規社員を増やして格差の問題が起きたりしてしまう。これは、そう簡単なことではありません。今の資本主義のあり方では、なかなか難しいことです

「新しい資本主義」はあり得るのか

古川:私は「新しい資本主義」はあり得ると思います。そもそも日本において資本主義というのは「日本の資本主義の父」と言われた渋沢栄一の言う合本主義の発想、すなわち「ひとりではできないことでも大勢が力を合わせればできる」という考え方が根底にあったのではないでしょうか。たとえばこうした視点から、日本から、「新しい資本主義」の形を見い出していくことは可能だと思いますし、しなければならないと思います。

小幡:その新しい形の資本主義ですが、今の資本主義が終わった後の新しい形、その提示を水野さんに聞いてみたい。本の中では、私にはわからないと、言っていますが、ぜひ逃げずに教えてください。

水野:そう簡単なことではないです。だって中世から近代への移行もコペルニクス、ガリレオ、ニュートンという3人がそろっていたからなしえたことです。ひとりではどうしようもありません

小幡:では、この3人で取り組んでいきましょうか。

水野:そうしましょう。

――本日はありがとうございました。

(構成:片瀬京子)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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