民主党の組織と政策 結党から政権交代まで 上神貴佳、堤 英敬 編著 ~政権交代までの重要かつ興味深い検証

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民主党の組織と政策 結党から政権交代まで 上神貴佳、堤 英敬 編著 ~政権交代までの重要かつ興味深い検証

評者 野中尚人 学習院大学法学部教授

2009年の政権交代によって日本の政治はよくなったのだろうか。多くの国民は、政治家への不信感や、「政治」への頼りなさを覚えるとともに、政権交代の主人公だった民主党へのさまざまな疑問を拭えない。

本書は、1996年の旧民主党の結成から2009年の政権交代に至るまでを対象に、民主党の組織や政策を分析したものだ。新進気鋭の研究者がチームとなり、骨の折れるデータ収集と、最新の分析手法を組み合わせた成果である。

本書がもたらした知見は多岐にわたっている。ほんの一部だけだが、主要な論点を挙げてみよう。たとえば、民主党が成功したのに対して、新進党が失敗した理由は何だったのか。リクルートや党内役職配分では、自民党とどう違うのか、あるいは似ているのか。そのほか、民主党における地方組織構築をめぐる困難さ、党組織と労働組合との関係、政党支持率からみた「与党効果」とメディア報道の重要性、政策争点としての「年金」問題の大きさ、2大政党化と「受け皿」の問題、マニフェストの変動とその意味など、それぞれが非常に重要かつ興味深い検証となっている。

民主党は、「有権者の政党ばなれ」と「自民党による政権の独占」という二重苦の中で、どのように政権交代にたどり着いたのか。本書は、まさに地道な実証研究を通じて見事にそれを描いたものだ。

残された大きな課題は、政権交代後である。政権を取るということの巨大なインパクトは、国政のみならず、民主党自身にも強く及んだ。著者らによる次作を期待したい。それまでの間、評者も執筆に加わった『ゼミナール現代日本政治』と併せてお読みいただければ、というのは、許されない「我田引水」であろうか。

うえかみ・たかよし
高知大学人文学部准教授。1973年東京都生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。

つつみ・ひでのり
香川大学法学部准教授。1972年大阪府生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程退学。

東洋経済新報社 4725円 279ページ

  

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