これが放置されると、学生は企業の言いなりになり続けなければならないし、結局、フライングした企業が有利ということになってしまう。早期の囲い込みが有利ということであれば、いつまでも大学における学業や大学生活の充実度が評価されるという世界観にはならない。
この点を確認しておきたい。
学生の立場は実は強い
もうひとつ確認しておきたいことがある。学生は内定が欲しいがゆえに、さらにその後、一生勤める可能性すらあるがゆえに、ついつい企業の言いなりになってしまいがちだが、その立場は意外に強いのだ。
学生には職業選択の自由がある。日本においては、企業が内定取り消しを行うと法的問題になる可能性がある一方で(大日本印刷事件が判例として有名である)、新卒者の内定は辞退しやすい。内定承諾書を書かされても、そこに法的拘束力はない。また、内定者研修を過度に研修などに参加させることについても、問題となる(宣伝会議事件が判例として有名である)。
そして、大学のキャリアセンターもこの「オワハラ」に関する相談を強化している。大学によっては、内定の意思確認を待ってもらうためのテクニックまで指南している。そのノウハウも蓄積されているのである。
そもそも、売り手市場である。学生に逃げられるのをこわがっているのは、企業の人事担当者の方である。「オワハラ」に負けないように、学生は強気に行ってもいい。もっとも、学生はバカではない。内定を持っている学生は(交渉優位にあるとも言えるのだが)、理不尽な内定者拘束研修旅行を拒否し、「納得のいくまで受けさせてください」と企業にお願いしているのだ。いま、オワハラで悩んでいる人も、声をあげようではないか。
そして、この「オワハラ度」こそ、学生が企業を選ぶ上で見るべきポイントだといえる。就活において、業界・企業研究をこれまで何らかのかたちで行ってきたことだろう。この企業のオワハラ度というのは、入社する1社を決める上で大いに参考になることだろう。
実は内定を強要する姿勢こそが、企業の体質を物語っているともいえないだろうか。他社と比較した競争優位性もないがゆえに、従業員に無理を強いる企業になっていないか。軍隊型の組織になっていないか。従業員の思考停止を誘発していないか。従業員の弱みにとことんつけ込む企業になってしまっていないか。しかも、あなたのことを本当に理解してくれているのだろうか。
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