他にも8月の第1週という、まさに大手企業が選考をし、内定を出す時期に重ねて内定者研修を行うというものがある。何泊かする研修旅行を遠方で行えば、他社の選考を受けることはできなくなる。もともと8月から選考が始まるというタテマエのもと、その上旬に研修旅行を行うということは、ルールの形骸化も甚だしい自体である(もっとも、この就活時期の申し合わせというのは、常に破られる宿命なのだが)。
まだまだパターンはあるが、これらが「オワハラ」と呼ばれるものの代表的な事例である。
「オワハラ」はどれくらい問題になっているのか?
では、この「オワハラ」はどのくらい発生しているのか。データでみてみよう。経団連の「採用選考の指針」で、採用選考活動が解禁される8月1日を前に、7月30日、文部科学省は「オワハラ」について大学・短大の約7割が「学生から相談を受けた」とする調査結果を発表した。このデータを元に各メディアでは「オワハラ」「7割」という言葉が躍った。
確かに看過することのできないデータではある。この調査は7月に、全国の国公私立の大学・短大から抽出した82校と、在籍する就職希望の学生3934人を対象に文部科学省が行ったものである。
オワハラの相談があった学校は56校であり、68.3%に相当する。昨年度に相談を受けたと答えたのは37校であり、全体の45.1%であるので、23.2ポイント増加している。「昨年度」というのは、就活開始から終了までを意味するので、中間段階ですでに前年を上回っている。
これが、実態である。
ここで、「オワハラ」の何が問題かを考えてみたい。私は、この問題に向き合わない限り、企業と学生、もっと言うと、従業員の健全な関係はありえないのではないかと考えている。
「オワハラ」は学生の「職業選択の自由」を奪う行為である。学生には企業を選ぶ権利がある。しかし、「オワハラ」は、内定が欲しい学生の立場、企業間の選考時期の違い、学生と企業の労働法や雇用慣行などに関する知識の差、先輩やリクルーター、インターンシップのメンターなどとのつながりなどを利用し、不安感を与え、他社を受けさせないようにする行為である。
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