楠田さんの夫は有給休暇をとり、子どもと一緒に久恵さんを会場から見守った。「自分なら逃げ出したくなるような舞台に立ち、スピーチをした妻はすごいと思います。また、1日子どもを1人で見てみて、その大変さもわかりました。妻が仕事をしたいのなら、サポートしたいと思います」。そして、夫婦共通の感想が、「ママ・ドラフトに出ると決めたことで、夫婦の会話が増えた」ということ。お互い顔を見合わせて「ありがとうね」と労い合っていた。
ママワーク研究所は、子育てしながらも自分らしく働きたい女性を応援する目的で、12年に設立されたNPO法人だ。「今のママたちは、社会人経験が長く、実績のある方もたくさんいます」と、理事長の田中彩さん。「ただ、企業の皆さんにそういう話をしても、『そんな有能なママは、一体どこにいるんですか』と聞かれることがしばしばでした」。そこで、企画したのがママ・ドラフト会議というわけだ。イベントは各方面で注目され、他県のNPOからも開催したいという申し入れがあるという。
フルタイムで働けない人材が、今後も増えてくる
特別審査員長を務めた、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏は、最後の挨拶でこう語った。「女性の力を生かすことは、業績向上のための企業戦略の一つです。子育てや介護などさまざまな制約のため、フルタイムで働けない人材が、今後も増えてくるでしょう。日本の社会構造が変化しており、これは抗いようのない現実です。どうすれば短時間でも生産性をあげられるような働き方ができるのか、個人の努力では限界があるので、職場全体で改革をしていただきたい」。
イベント終了後、会場では、協賛企業とファイナリストたちが名刺交換をする場面が見られた。ママ・ドラフト会議に出たからといって、必ず就職先が見つかるというわけではないが、自分を見つめ直し、この舞台に立ったことは、今後の人生において大きな自信となるはずだ。
より有意義なことは、彼女たちの力強い言葉がさまざまな人の心に響いていくことだ。それによって柔軟な働き方をできる職場環境が整備されるスピードが速まるのであれば、ママ・ドラフト会議には大きな意義があるのかもしれない。
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