「働かずに生きたい」はろくでなしですか

自由を求めて生きるアナーキストたち

著者は東日本大震災の時に愛知県の友人から連絡があり、お世話になったという。カネも持たずに出かけ、1日にゆでたまご20個くらいごちそうになり、焼酎までいただく。「大五郎」でべろべろになりながら、相互扶助の概念を身体でつかんだとか。

役に立つとか役に立たないとか、見返りを求めるとかでない。こまったときにありがたみを感じる、生の無償性。それさえあれば、信じられれば、社会の目を気にせず自分の思うように自由に生きられる。大杉が生きた時代から100年近く経つわけだが、現代に照らし合わせても、いつ傾くかわからない会社に寄りかかるよりは、よほど生の基盤になりうる。

恋愛に立ちはだかる現実の壁

恋愛だって本来はそうだ。制度や役割にとらわれるものではなく、自由なものなのだ。働かずにもてたいと叫ぶ著者もかつては婚約者がいた。

合コンに行って、家が近くという共通点があり意気投合。小学校の保健の先生だ。なぜか東日本大震災の当日に呼び出されメロンパンを渡され、すっかり、惚れてしまう。メロンパン焼いちゃうなんて、けなげ、かわいい。年収10万円(当時)の著者を虫けら扱いしない。結婚を前提にお付き合いしてくださいと告げられる。

だが、幸せな日々は続かない。彼女の周囲は猛反対。夢を追うな、その年でポストがないなら研究者の素質はないのだからあきらめて職探ししろ、とお節介にも著者に迫る。

「ゼクシィ」を買って式場を見学し、年収の3分の1相当ということで、清水の舞台からダイブって感じで3万円の婚約指輪を買う。だが、就職は依然として決まらない。著者を急かす彼女。非常勤講師の募集にも立て続けに落ちる。博士論文も書き直しだ。おれ、研究頑張ると誓っても、彼女の目には真面目に仕事を探しているようには映らない。そもそも、非常勤講師ってバイトじゃねーかと。ついに彼女の堪忍袋の緒が切れる。

「研究なんてやめろっていってんだろ。わたしを愛しているなら、家庭を大事にしたいとおもうのなら、そのくらいはできるはずだ」

なんだか人ごととは思えない、と感じた人もいるだろう。

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