退屈 ピーター・トゥーヒー著/篠儀直子訳
「昼間の悪魔」とキリスト教が呼ぶ人類永遠のテーマ「退屈」を歴史的、哲学的、生物学的、そして文学や絵画に探ってみたらどうなるか。「実存の退屈」など形而上的で退屈な箇所もあるが、できるだけ具体的に話を持っていこうというところに著者の苦心がある。動物は退屈するのか。認知症と退屈は両立するのか。鬱(うつ)との関係は。そもそも生きるのに懸命なら退屈している暇などなさそうだが、イタリア南部で「終わりなき退屈から市民たちを救った執政官を讃える」古代の碑文が発見された一件からすると、それも怪しい。
退屈と時間の相関は絶対的かつ相対的で、多様性と肉体的・頭脳的活動は脳を刺激して退屈を追い払ってくれる、退屈は有益でもある、など議論の展開はかなり楽しめる。多面的にして微視的薀蓄(うんちく)で退屈させない章もあるにせよ、副題の「息もつかせぬその歴史」(原文はA Lively History)は誇大だという人もいるかもしれない。(純)
青土社 2310円
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