ネット証券5社の牙城を崩すPayPay証券の破壊力 破竹の勢いで口座数伸びるが収益力で課題残す

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一方で、収益性の観点では課題を残している。

前身のOne Tap BUYをPayPay証券に名称変更したのは2021年2月。以来、赤字が続いており、「数年以内に(単年度黒字を)達成できるところまで来ている」(番所社長)と言うが、達成時期については明言を避ける。

PayPay証券は、顧客の預かり資産を増やすことで収益の拡大を目指すストック型のビジネスを志向している。だが、現時点では投資初心者によるNISAでの運用が軸になるので、どうしても1人当たりの投資額が小さい。そのうえ、投資信託の信託報酬が極限近くまで下がる中では、顧客を爆発的に増やさなければ収益化を図ることは難しい。

口座の稼働率も他社に見劣りしている可能性がある。例えば、楽天証券では2024年6月の総合口座の稼働率が64.3%、NISA口座の稼働率が74.1%にのぼるが、PayPay証券は稼働率を公表していない。ある証券アナリストは「投資初心者は口座を開設しても実際の買い付けには至らないケースが目立つので、稼働率が他社よりも低い可能性が高い」と見る。

FXや信用取引といった収益化に直結するラインナップを揃えていないことも、黒字化に時間がかかる要因だ。番所社長は「株式手数料などを無料化する一方で、リスクの高い商品を推進して収益を上げるやり方はサステナブルではない」とし、「あくまで投資初心者に資するサービスでストックを積み上げていく」考えを強調する。

ただ、「NISA取引だけではほとんど収益にならない」(ネット証券幹部)のが現実。足元の市場変調が投資初心者のNISA運用にブレーキをかける不安も浮上している。

「デジタル給与」が追い風に

もっとも、PayPay証券はマーケティングコストや完全内製化しているシステムコストなどの面で、他社よりも優位性があるのは確か。PayPayが厚生労働省から8月9日に事業者として指定を受けた「デジタル給与」も追い風になる。

PayPayアカウントへのデジタル給与払いが予定通り年内にスタートすれば、PayPayマネーが銀行口座に近い性格を帯び、まとまった資金が入ってくるため、「1人当たりの投資額が拡大する」(番所社長)ことが期待される。

口座数の拡大だけではなく、収益を上げられるビジネスモデルをどう構築していくのか。その姿を示すことができたとき、名実ともに「ネット証券3番手」の地位を確立しているはずだ。

北山 桂 東洋経済 記者

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きたやま かつら / Katsura Kitayama

1975年群馬県生まれ。日本農業新聞や博報堂アイ・スタジオ(コピーライター)、「週刊金融財政事情」編集長などを経て、2024年4月東洋経済新報社入社。

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