新人の心を病ませた法人営業「カスハラ」の理不尽 取引先の「カスハラ問題」どう乗り越えるか

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「クレームをつけたいのはこっちのほうです。退職に追い込まれた新人とのやり取りを録音し、SNSで流してやりたい気持ちです」

近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)の問題が急増している。一般的にはサービス業を営む店舗のスタッフや従業員に対しての迷惑行為がカスハラと呼ばれるが、昨今は法人営業に対するカスハラも増えているという。

法人営業でも問題化するカスハラ

事業を営んでいる以上、お客様が大事なのは当然だ。お客様がいなければ事業は成立しない。だからこそお客様を神様と捉えて接することは、素晴らしい心構えだと思う。

しかし礼儀はあらゆることの「根本」である。お客様は、お客様としての礼儀をわきまえていることが「前提」で、「客であれば何を要求してもいい」という発想は非常識であろう。

これはサービス提供者とお客様だけでなく、上司と部下、親と子どもの関係でも同じである。親しき仲にも礼儀あり、なのだ。

執拗なカスハラによって閉店に追い込まれたラーメン店。土下座を要求された市職員など、カスハラの対象となるのは、主に個人(消費者)に対してサービスを行う事業や自治体で働く人たちだ。

ところが個人ではなく、法人に対する営業にもカスハラは増えている。

私がIT企業でシステムエンジニアをしていたころの話だ。

突然、上司がお客様から呼び出されたので私も同行した。会議室では営業部長と、その部下と思われる課長3人、そしてシステム事業部のトップが腕組みして私たちを睨みつけ、「どうやって落とし前をつけてくれるんだ!」と怒り心頭だった。

「期待通りにシステムが動かない」「誤動作が続いている」というのなら平謝りするしかない。だが、お客様が放った一言は「このシステムを導入したら、営業の生産性がアップするんじゃなかったのかっ!」。

怒りの原因は、驚くことに「成果が出ないこと」に対してだったのだ。頭を下げながら、腑に落ちない上司と私は思わず顔を見合わせた。

確かに、営業の生産性アップを目的に、要件定義通りにシステム開発したのは間違いない。お客様はそれを期待して5000万円ほどの費用を投じたのだ。しかしシステムを導入すれば自動的に営業の生産性が上がるわけではない。そんなことは常識ではないか。

一人一人の営業が日々の営業活動をそのシステムに入力し、 入力されたデータを分析して、改善を続けることによって生産性は上がるのだ。当時の私には「こんなに高いフライパンを買ったのに、美味しいハンバーグが焼けないじゃないか!」と難癖つけている人と同じようにしか見えなかった。

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