熟成臭のある豚骨ラーメンは「呼び戻し」の製法が一般的だ。寸胴鍋を決して空にせず、古いスープに新しいスープをつぎ足しながら作る製法である。
一方で、多店舗展開をするチェーンの豚骨ラーメン店のほとんどは「取りきり」のスープである。寸胴鍋に決まった量の豚骨などの素材と水を入れ、毎日その都度煮込んで作る技法だ。当時、「和」も取りきりでスープを作っていた。
熟成臭のある豚骨ラーメンを目指すならば、ここで呼び戻しの製法に移行するのが一般的な考えだったかもしれないが、馬場さんは取りきりの技法で熟成臭を出せないかを研究し始めた。
「いろいろ考えて取りきり×熟成を目指してみることにしました。取りきりスープに呼び戻しの旨味を取り入れられないかと試行錯誤したんです。取りきりの製法ならばスープを煮詰めて濃厚にすることもできます。フレッシュな肉感のあるスープと、骨がグズグズになるまで煮た重いスープを合わせれば、美味しい豚骨スープが完成するのではないかと考えたんです」(馬場さん)
ここから先、5年ほどかけて常にラーメンをリニューアルし続けているが、最初のほうは濃厚さに振ったリニューアルだった。濃度を上げることで以前よりも旨味を強めていくやり方だ。
このリニューアルで少しずつお客さんがついてきたが、作っていくうちに馬場さんの理想も上がっていく。その後、濃度を少し下げつつも旨味や熟成感をうまく出すようにし、4年ぐらい経った昨年末から表面に泡を浮かべるようにした。この頃から少しずつラーメンファンから噂が立ち始める。
かく言う筆者も今年、初めて同店を訪れたのだが、その美味しさに度肝を抜かれることとなった。以下、筆者のブログからの抜粋である。
その興奮が、読者にも伝わるのではないか。
宣伝皆無なのに…有名店の店主が続々と来店!
馬場さんの飽くなき豚骨スープの研究が実を結び、有名ラーメン店主の来店も、だんだんと増えてきた。
今年になってからは、有名店「ラーメン 健太」の横尾店主が来店したほか、「博多ダイナー琉」の森田店主がその味を大絶賛。馬場さんがラーメンをリニューアルしたとは一言も言っていないのに、勝手に噂が広まっていったのだ。
ここからようやく他店のラーメン店主との交流が始まった。
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