「世界恐慌で事態悪化」日本が戦争に突入したワケ 無謀な戦争へと突き進んでしまった理由とは

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ところが、です。金本位制を導入した後に日本は不況に陥りました。原因は、金本位制の導入方法です。

先述の通り、金本位制では、円の価値と金の価値を結びつけます。このときの基準を「平価」(=交換レート)と呼びます。

このとき「平価」の選択肢は2つありました。ひとつは、旧平価で100円=49.85ドルという金輸出解禁前の相場基準です。もうひとつは新平価で、100円=46.5ドルという当時の実勢を反映した基準です。

あえて不況を受け入れるつもりでいた理由

時の大蔵大臣・井上準之助は、当時の経済実態に合った新平価でなく、経済実態に合わない旧平価で金本位制を導入しました。円の国際的信用を落としたくないという配慮から旧平価(金輸出解禁前の相場)で解禁したわけですが、これが実質的に円高を招き、輸出に不利な状況を生み出してしまいました。

旧平価だと円の価値が過小評価されているから、円に人気が集まってしまったのです。円高のときはドルの価値が円に対して低くなるので、ドルで支払いを受ける輸出は不利になり、逆にドルで払う輸入は有利です。輸入に有利なので、輸入代金としてドルでの支払いが増加し、貨幣と同じ価値をもつ金が国外に流出することにつながりました。問題はここです。

日本が保有する金の量はあくまで限られています。金本位制では、国が保有する金の量によって、通貨の発行量も制限されます。金の代わりとして貨幣を使っているのですから、金がないのに貨幣を増やすのはおかしいからです。金本位制のもとで金が外国に流出すると、日本で発行できる国内通貨=貨幣の量が減少。金融引き締めと同じ効果をもたらし、不況の原因となったのです。

ただ、井上準之助はあえて不況を受け入れるつもりでいました。先述の通り、不況によって倒産しそうな企業がつぶれて、強い企業が残る。その結果、長期的に日本の経済は健全になり、国際競争力がつくだろうと考えたからでした。

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