「佐渡島の金山」が変えた日本外交の「安倍基準」 世界遺産登録めぐり日韓の外交が機能した

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再び繰り返してはならないとされた発言だったにもかかわらず、現在もなお有効であることを、日本政府は間接的ながら認めたのである。

日本代表はさらに、委員会でこうも述べている。

「日本は……韓国との見解の相違を友好的に解決する意欲を示すことを目的として、 すべての労働者の過酷な労働環境を説明し、その労苦を記憶に留めるため、現地の説明・展示施設において、 すべての労働者に関する新たな展示物をすでに展示した」

 

また、その展示の一部を紹介するとして、「朝鮮半島出身の労働者は、削岩、支柱、運搬といった危険な坑内作業に従事する者の割合が高かったことを示すデータもある。さらに、労働条件をめぐって行われた労働争議に関する記録 、食糧不足に関する記録、 死亡事故に関する記録も残されている。朝鮮半島出身者について、ある1カ月の平均稼働日数は28日であったことを示す記録があるほか、朝鮮半島出身労働者の中には逃走したり収監されたりした者がいたことを示す記録もある」と加えた。

「日本政府の対韓政策は変化した」

安倍氏は戦後70年を機に出した、いわゆる「安倍談話」で、「子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と訴えた。安倍氏の死去後も、韓国に対する歴史問題では、安倍氏が語った表現や認識が交渉の際の基準となってきた。

だが今回の日本代表の表明は、「安倍基準」を超える踏み込んだ内容となっている。今回、韓国との交渉にかかわった日本政府関係者の1人は「日本政府の対韓政策は明確に変化したと言える」とふり返る。

韓国では国内の厳しい政治対立もあって、野党勢力が「日本の歴史歪曲を容認した」などと尹政権に強い批判を加えている。ただ、国を挙げての反対運動が起きるような状況ではない。

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