「佐渡島の金山」が変えた日本外交の「安倍基準」 世界遺産登録めぐり日韓の外交が機能した
困った揚げ句、日本代表の発言を知らせるホームページに異例の注釈を加える。それは例えば、こんなふうだ。
つまり後付けで、「意思に反して」「働かされた」というのは、徴用の制度そのものの問題であり、「犠牲者」も朝鮮半島出身者のみならず、日本人を含めたすべてが対象だ、とした。
しかし、韓国政府当局者は「交渉の過程でそういう趣旨だとの説明は一切受けておらず、一方的に日本政府が解釈を変えた」と明かす。
さらに「記憶をとどめるため」に東京都内にできた施設では、朝鮮半島出身の労働者への虐待や差別を「聞いたことがない」とする元島民のインタビューなどが紹介され、韓国側は反発した。
日本政府としては、国内では「右」から不評を買い、国際社会に対しては約束を反故にしただけに、同じ問題を抱える「佐渡島の金山」問題は負担を感じる事案だった。
安倍氏らの岸田首相への突き上げ
2022年1月中旬、岸田文雄首相はいったんユネスコへの推薦を見送る方針を固める。
だがそれらが報じられると、また「右」が動き、首相を突き上げ始めた。安倍氏が「(韓国との)論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」などと発言したことで流れが変わり、岸田首相は判断を変えて推薦することになった。
このころ、日本政府内では、深いため息をつく担当者もいた。新潟県史には、佐渡鉱山への朝鮮人動員を「強制連行」と記されているなど、さまざまな記録が残されており、「気合だけで登録できる問題ではない」(日本政府当局者)との声がもれた。
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