「佐渡島の金山」が変えた日本外交の「安倍基準」 世界遺産登録めぐり日韓の外交が機能した

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ただ、「明治日本」と大きく異なったのは、その後、韓国の大統領選で尹錫悦氏が当選し、政権が左派から右派に代わったことだ。

2023年3月、日韓の最大の外交懸案だった徴用工問題は、尹政権が決断し、日本企業に実害がおよばない建て付けでの解決策を発表して、両国関係は急速に改善した。

そんな順風を受けるなか、日本政府内には、「佐渡」でも韓国政府が主張のハードルを下げてくれないかとの淡い期待が芽生えた。だが韓国側の反応は逆だった。

「明治日本」では、ユネスコの委員会での発言を守らず、その後の展示でも裏切られたことに加え、徴用工問題でも日本側が何らかの誠意をみせる、いわゆる「呼応」措置をとっていないため、「今度こそ譲るのは日本の番だ」との声が韓国政府の一部の高官からも出始めた。

首脳間の蜜月が後押し

ただ、2023年だけで7度も首脳会談を実現させた岸田、尹両政権だけに、この問題のために関係を後退させてはならないとの認識は互いに共有していた。

交渉は登録が決まる世界遺産委員会の直前まで続いたものの、冒頭に紹介した日本代表の発言の線で落ち着いた。「朝鮮半島出身者」や「韓国と緊密に協議」とあえて名前を挙げつつも、「全体」「包括的」を強調して範囲を広げた。

さらに、日本国内の「右」対策として、2015年に表明した「その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいた」という文言は繰り返し使えないものの、その代わりに「日本は、すべての世界遺産委員会関連決議および同決議に関連する自らのコミットメントに留意」するとした。

この部分に関連して、韓国紙・中央日報が7月31日の電子版で、在韓日本大使館が「自らのコミットメント」には2015年の「明治日本の産業革命遺産」登録時の発言も含まれると回答した、と報じた。

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