次に大事なことは、クリエイティビティです。将来的に、人間の仕事はコンピュータに取って代わられ、現在の職業の65%はなくなると言われています。だからこそ、これからの仕事は、コンピュータと違うことができるかどうかが重要になってきます。その中で、人間が持つ大事な能力の一つこそ、クリエイティビティなのです。何事にも必要なクリエイティビティを身に付けることは、成功するうえでの大きな武器になるのです」
齋藤氏は、そのクリエイティビティを育むには、人間性を高めることが大切だという。それが結果として、アントレプレナーシップの養成に大きく役立つ。そして、最も大事なことは、「イノベーション」だと強調する。
「日本は技術大国と言われ、海外にたくさんの電子部品などのパーツを輸出しています。しかし、パーツだけではなかなか儲かりません。競合も多く、価格競争にもなりやすい。日本企業が苦労してつくったパーツを使って、海外の企業は大きな利益を得ています。おかしいと思いませんか。日本企業も、たとえばサービスやソフトまでを含めた製品のエコシステムをつくれば、もっと儲けることができるはずです。日本企業には技術があります。考えをちょっと変えるだけで、もっと儲けることができる。それにはイノベーションが必要なのです」
早く失敗することが大事
そうしたイノベーションを起こすには、サイエンスやエンジニアリングだけでなく、これからは、そこにデザインが加わると齋藤氏は指摘する。いわば、リベラルアーツとデザインである。だからこそ、文系、理系を融合することが必要だと言う。ただし、それだけでは足りない。さらに必要なことがある。
「それが多様性(ダイバーシティ)です。イノベーションは多様性の中でこそ、生み出せるものです。しかし、日本はダイバーシティがまだまだ弱い。それを解決するためにも、女性の力をもっと活用すべきなのです」
さらに齋藤氏は、若い人をもっと現場で登用すべきだと述べる。「たとえば、アメリカのベンチャー起業家の平均年齢は約27歳と言われています。確かに、その年齢は人がイノベイティブでクリエイティブな時期。日本企業でも、若い人をどう活用するのかが、これから大事になってくるでしょう」。
しかし、と齋藤氏は続ける。
「日本企業では、イノベーションを生み出せと掛け声をかける一方で、失敗を許さない風土があります。その真逆が、シリコンバレーと言えるでしょう。彼らは早く失敗することが大事だという考え方です。イノベーションは失敗から生まれるはず。失敗を経験に変えることが重要なのです。失敗を恐れることこそが、日本企業の足を引っ張っているのです」
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