能登半島地震で液状化「変わり果てたまち」の今 住民の多くが避難生活、復興は時間との闘い

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問題はどのように復旧・復興を進めていくのかだ。

5月に西荒屋地区では、住民が「復興委員会」を結成。若い人から高齢者まで約30人が参加した。委員長を務める黒田さんによれば、「これまでに3回ほど会合を持ったが、現時点では町に要望を上げることにとどまっている。地区の将来に関しての青写真は描けていないのが実情だ」という。

というのも、内灘町の復興計画策定は2024年度末までかかる見通しであり、記者が訪問した7月中旬時点で、住民が要望した復興計画・復興スケジュールや液状化対策についての説明会の開催、高台などの安全な場所での復興住宅の建設などの具体策は示されていなかったためだ。

地区では神社も損壊し、祭りなどの行事も軒並み中止となった。壊れたままの住宅が目立ち、人影も少なく、時が止まったような状態だ。

「頑張っている人たちが希望を持てるような明るい話題がないと、日が経つごとに住民は流出してしまう」と黒田さんは危機感を抱く。

かほく市が液状化対策で支援策決定

こうした中、液状化被害からの復旧に向けた動きも出始めた。いち早く動いたのが隣のかほく市だ。同市は7月12~13日の2日にかけ、液状化の被害に遭った住民を対象にした住宅再建のための補助制度の説明会を開催。2日間で約200人が参加した。

かほく市大崎地区で7月12日に開催された住民説明会。液状化で被害を受けた住宅再建のための支援策が示された(撮影:筆者)

 

説明会を主催した同市都市建設課の小泉博義担当課参事は、「国や県の方針が決まったことで、市としてもできる限り、具体的な方針を示すことに努めた。まずは被災者の方にこういう補助制度があるということを示したうえで、詳しい内容については個別相談を通じて説明していきたい」と東洋経済の取材で答えた。

かほく市が示した説明会資料によれば、液状化による被害を受けた宅地の復旧には、最大で958万3000円の補助がなされる。その対象は擁壁、地盤、宅地の法面などの復旧、住宅の地盤改良、傾斜修復などであり、宅地所有者の負担は応急修理などの少額工事相当額の50万円を控除したうえで、全体の工事費の6分の1にとどまる。これとは別に、住宅の耐震改修として250万円の補助も用意された。

その結果として、宅地復旧および住宅の耐震改修で合計1450万円がかかった場合、補助額は1208万3000円となる計算だ。県が定めたルールに独自の補助を上乗せすることで、「県内で最も高い補助率とした」と、小泉氏は、被災住民への配慮を強調した。

東洋経済記者が取材した7月12日の住民説明会では、「隣の家との境界の確認はどうすればいいのか」「個別相談の対応能力はどれくらいあるのか」といった質問が出た。その一方で、市担当者が丁寧に説明したこともあり、行政への批判の声は聞かれなかった。

かほく市が住民説明会の開催を急いだことには理由がある。山名田勇一・大崎区長は早期の説明会を働きかけた理由を次のように説明する。

「地元では住み続けたい人と、建て替えや引っ越しをしたいという人などで意見がばらばらになっている。このまま時間がたつと、地域からどんどん人がいなくなってしまう。それを避けたかったのでとにかく早い段階での説明を求めた」

被害の範囲が大きかった内灘町でも支援策が決定し、液状化対策に関する住民説明会が8月20日から25日にかけて、地区ごとに開催される。

液状化からの復旧・復興への道のりは長いものの、その第一歩がようやく踏み出されようとしている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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