精神科医が診た「外交敗戦」 和田秀樹著
外交が心理戦であることは否定できない事実だが、日本はその観点からの努力をほとんどしていない。相手国首脳の情報収集も、ましてやろくな分析もせずに、首相や外相が思いつき的あるいは感情爆発的な発言を繰り返す。情報ゼロで建前と本音の使い分けすらできない政治家が外交という戦争に勝てるはずがない。以上の視点に立って、心理学の専門家である著者は米中ロと日朝韓の指導者たちの言動をコフートの精神分析理論でさばいてみせ、狙いや思惑を推断する。
自身の政治基盤が強化されるかどうかが決定的に重要で、ために「マッチョ的」態度で国民のナショナリズムに迎合し、かつ経済リアリズムを追求する外交。その戦いで勝利するには心理戦に対応するシンクタンクを作れと提言している。北方領土、尖閣、竹島、普天間をめぐる「断定的」分析は鋭く面白い。といってすべてそのとおりとは言いがたいのではあるが、問題提起自体は重要である。(純)
光文社 1260円
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