【産業天気図・建設業】民間投資は堅調も公共の低迷・競争激化で難局続く
来年前半にかけての建設業の空模様は「曇り」から「雨」へと悪化しそうだ。
製造業などの民間設備投資関連工事の需要は依然堅調だが、新政権下でも公共事業削減のコンセンサスが完全に覆る可能性は乏しい。また、今年1月の改正独禁法施行以後の公共工事での低価格入札は終息しておらず、来年度以降、各社の完工・粗利益率への影響は楽観できない。
今07年3月期第1四半期(4~6月)から多くのゼネコンが四半期業績を開示したが、受注・工事とも下期に集中する業界特性から、全般的に目立った材料は見られなかった。準大手の長谷工コーポレーション<1808.東証>が鹿島<1812.東証>ら大手4社を上回って唯一100億円超の経常利益を計上したが、同社は「利益率から考えればほぼ前期並み」とし、通期で影響するサプライズではないと見ている。
今下期の傾向としては、引き続き好調な民間工事と厳しい公共工事の対比が基調。公共事業削減を進めた小泉政権後の新内閣の方針に注目が集まるが、「期待はするが、現実には(予算増は)厳しい」(中堅ゼネコン社長)と慎重視する声が多い。一方、民間建築はマンション等の需要が高いが、土木工事に比べ、これらは利益率が高くなく、各社が進める民間建築完工増が業績向上に即座につながる可能性は低い。さらに、公共事業での総合評価方式入札(価格以外の基準も入札評価に盛り込む)の拡大で、技術力・人材の豊富な大手と、それ以外の中堅ゼネコンとの格差が広まる様相を見せている。
続く来期前半は、06年中に受注した公共工事の採算性が一つのポイントになりそうだ。現在、一部大手や準大手が積極的に低価格入札を繰り返しており、これに引き擦られる形で公共工事入札の落札率が低下傾向にある。公共土木に強いハザマ<1719.東証>らへの影響が注目される。また、06年10月下旬にも一部地域で導入される「入札ボンド制度」で、財務体質が弱いゼネコンが公共事業で一段の苦戦を強いられる可能性もある。
【鈴木謙太朗記者】
(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部
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