「ダイエット薬」実はあまり知られてないメリット 生活習慣病の治療パラダイムが変わっていく

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日本を含む世界各国で実施した臨床研究では、糖尿病治療薬「チルゼパチド」により52週時点までに体重が20%近く低下し、AHIが30回ほど(63%ほど)少なくなることがわかった。プラセボ群では1時間あたり5〜6回(5〜6%ほど)低下したのみで、ほぼ変わらず。OSASは主にCPAP治療を行うが、減量することで気道が開きやすくなり、気道にかかる圧が低く済み、不快感が減るため有効だ。なかにはCPAP治療が不要になる人もいるだろう。

注意しておきたいのは、日本人のOSAS患者の4割ほどは肥満でなく、日中の眠気を感じない人が男性では2割いることが報告されており、肥満でないから無呼吸でない、とは限らない。寝ている間にいびきをかく人は、OSAS治療の心得がある医師に相談してみることをお勧めする。

GLP-1作動薬は膵炎のリスクを上げる

アメリカのデータベースをもちいた研究結果が2023年11月に発表されている。GLP-1作動薬のリラグルチドとセマグルチドで治療を受けている人の消化管に対する副作用を、同じく肥満の治療薬だがGLP-1作動薬ではないブプロピオン-ナルトレキソンで治療している人と比較した。膵炎と腸管閉塞、腸管麻痺の発生率がGLP-1作動薬使用者で高かった。膵炎の発生率(1000人年当たり)は、セマグルチドで4.6、リラグルチドは7.9、ブプロピオン-ナルトレキソンが1.0であった。

薬には副作用がつきものであり、リスクとメリットを天秤にかけて治療に用いるか決め、副作用が起きていないか症状や血液検査でチェックする必要がある。セマグルチドは、1000人の人が1年間治療に用いたら、4.6件の膵炎が発生するということであり、頻度は決して高くないものの、膵炎は重症となると治療に難渋し、ときに致命的となる厄介な病気だ。医師の監視下で治療に用いるべき薬剤であることには間違いない。

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