世代間論争で得をするのは金持ちの若者--『就職、絶望期』を書いた海老原嗣生氏(「ニッチモ」代表取締役)に聞く

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──「若者はかわいそう」というのは間違いだと言っていますね。

若者の非正規雇用にばかり社会の関心が集まっているが、データを見ると、男性は20代前半に非正規であっても、20代後半から30代前半では非正規率が急激に減る。つまり多くが正規雇用に就いている。その一方で、非正規雇用1721万人のうち40歳以上は59%を占めている。

誰が社会的な弱者かを考えれば、それは何より高齢者だ。この人たちは正社員になることができない。2番目に弱いのは熟年男性でリストラに遭ってしまった人、もしくは勤務先が倒産してしまった人だ。3番目は仕事を辞めてしまった女性。職歴が途切れて、10年も20年も家で子育てしかやってこなかった主婦は正社員になろうとしてもなれない。こんなにも弱い立場の人がいるのに、なぜ若者にばかり関心が向いてしまうのか。

非正規1721万人の内訳は、主婦が52%で、60歳以上の高齢者が15%、学生が9%。つまり「主婦、高齢者、学生」が非正規全体の76%を占めている。「若者かわいそう論」では、大卒でも正社員になれない人を議論の中心に据えるが、それは非正規問題の本質ではない。大卒の受け皿は全体では変わっていない。

──大卒の仕事は減っているわけではないと?

メディアも有識者も勘違いしているが、大卒相応の仕事が減っているのではなく、従来高卒の人が就いていた仕事がなくなっている。これはグローバル化の影響が大きい。

今まで高卒で就職していた人が大学に通うようになった。しかし、こうした人が仕事に巡り合えるような仕組みがないから就職できない。ミスマッチという言葉があるが、これは大学生の自己責任論につながりかねない。大学生が就職で高望みしているというより、中小企業の求人はたくさんあるのに、それがうまく見えないことが問題なのだ。中小企業の仕事内容や勤務状態、社風がもっとリアルにわかるような仕組みが必要だ。

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