CEOなのにクビ「ChatGPTの親」が仕掛けた猛反撃 持ち前の人心掌握術でクーデターを4日で制圧
アルトマンを取り巻く人たちは、こうした彼の悪癖を「ペーパーカット(紙による切り傷)」に喩える。
通常ペラペラと柔らかな紙でも、偶々そのエッジの部分がナイフのように肌をかすめれば切り傷を生じる。それが致命傷化することは有り得ないが、不快な痛みを伴うのは確かだ。そのようなペーパーカットが一度や二度なら我慢できる。しかし何度も続いて繰り返されると、誰でも最後には苦痛に耐えきれなくなって感情が爆発してしまう。
スツケヴァーら4人の取締役会がアルトマンを解任した背景には、まさにそれがあると見られている。
アルトマンはOpenAIに直接被害をもたらすような悪事や違法行為を働いたわけではない。ただ、彼によって繰り返される人心操作や噓が、取締役会メンバーにペーパーカットのように段々効いてきた。それがたまりたまって、あるとき耐えきれなくなり、社内クーデーターへと結び付いたようだ。
このため、その理由を周囲から問いただされても、彼らは「(アルトマンは)我々との意思疎通において常に率直ではなかった」という抽象論に終始せざるを得なかったのである。
従業員が「アルトマン支持」で団結した理由
社内クーデターが起きてから2日後の11月19日(日)の早朝、アルトマンはOpenAIの本社ビルを訪れた。彼は入館の際、非常に困惑した表情でゲスト・バッジをつけている自撮り写真をX(旧ツイッター)でシェアし、「これをつけるのは最初で最後」とコメントした。また、その日、本社ビルにはグレッグ・ブロックマンも訪れた。
彼らは社屋の一室でビデオ会議システムから、(それぞれ異なる場所にいる)トナー、マッコーリー、ディアンジェロと交渉した。その場には、もう一人の取締役であるスツケヴァーも同席した。
この時点でアルトマンは、従業員や投資家からの圧力に耐えきれなくなった取締役会が譲歩する形で、自分がCEOに復帰すると予想していた。しかしCEOと同時に取締役への復帰も求めるアルトマンに対し、取締役会は断固拒絶するなど交渉は難航し、最終的に物別れに終わった。
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