CEOなのにクビ「ChatGPTの親」が仕掛けた猛反撃 持ち前の人心掌握術でクーデターを4日で制圧

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

OpenAI取締役会の構成メンバー(取締役:director)は原則9人と定められており、発足当初も9人だったが、その後何度かの入れ替わりを経て2023年11月の時点(社内クーデターが起きる直前)では6人になっていた。

その内訳は社内取締役が3名、社外取締役が3名である。

前者はサム・アルトマン(共同創業者、CEO)、グレッグ・ブロックマン(共同創業者、社長、取締役会・会長)、イリア・スツケヴァー(共同創業者、チーフ・サイエンティスト)、後者はアダム・ディアンジェロ(アメリカのQ&Aサイト「Quora」の共同創業者・CEO)、ヘレン・トナー(米ジョージタウン大学・研究者)、ターシャ・マッコーリー(米シンクタンク「ランド研究所」非常勤研究員)である。

取締役会の構成メンバーのうち、OpenAI LPの株式を保有できるのは半数未満のメンバーに限られる。つまり取締役が最大枠9人の場合であれば4人、6人の場合であれば2人だ。因みにアルトマンは「OpenAI LPの株式を所有していない」とする旨を述べている。

この特殊な取締役会は強力な人事権を有する。そこでは会社(OpenAI LP)や株主の利益よりも「AI開発の安全性」が優先され、それに背く経営をしたと判断された場合には、たとえアルトマンのような共同創業者・CEO・取締役でも、多数決で即時解任される決まりになっていた。

対立を煽って人心を操作する

このOpenAI取締役会とアルトマンCEOの間には以前から隙間風が吹いていた。

特にChatGPTのリリースから1周年を間近に控えた2023年10月、社外取締役の一人ヘレン・トナーが大学の同僚らと共にある論文を発表した。

この論文でトナーらはOpenAIの製品開発に対する姿勢を手厳しく批判する一方、そのライバルであるAIスタートアップ企業「アンソロピック」を高く評価していた。

それによれば「OpenAIはChatGPTを大急ぎでリリースするために(その安全検査などで)手抜きをしたが、アンソロピックは(ChatGPTに対抗する)自社製チャットボット(対話型のAI)の安全性を確保するために、そのリリースを敢えて遅らせた」という。

この論文を読んだアルトマンは当然ながら気分を害した。

彼はトナーに電話をかけて「この論文はいずれ問題を引き起こすことになる」と警告を発した。この頃、アメリカのFTC(連邦取引委員会)がOpenAIに対する調査を開始しており、トナーらの論文はそれにかっこうの非難材料を与えてしまうと懸念したのだ。

次ページスツケヴァーが「自分への侮辱」と感じたこと
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事